研究課題/領域番号 |
26420753
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
簗場 豊 東京大学, 生産技術研究所, 技術専門職員 (90723247)
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研究分担者 |
吉川 健 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (90435933)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 太陽電池 / シリコン / 脱リン / マルチフラックス / 酸素ポテンシャル |
研究実績の概要 |
H27年度はH26年度に引き続き、CaO-SiO2-(Al2O3)-P2O5系融体の局所構造と酸素分圧との関係をMAS-NMRなどで調査することを計画した。 電気抵抗炉内大気下で1500-1600℃で白金坩堝中でCaO-SiO2-0/10/15mass%Al2O3-2%P2O5組成の原料を溶融保持し炉外急冷することで、ガラス状試料3種を溶製した。低酸素分圧となる条件として、金属Siとガラス状試料を合わせてAr雰囲気下で1500-1600℃で黒鉛坩堝内で溶融保持し炉内急冷することで、ガラス状試料の作製を試みた。10/15mass%Al2O3入り試料2種はX線回折でハローパターンを確認したが、含まない試料では均一ガラスが得られていない。 ガラス状試料2種のMAS-NMR測定を行ったところ、リン酸イオン由来と異なる位置および半値幅のピークが得られ、リン化物イオン由来であると考えられた。Al2O3量が多いものはピーク位置が低周波側にシフトしており、Ca-P化合物およびAl-P化合物の量比などが影響していると推察された。 MAS-NMR測定におけるPの化学状態の酸素分圧依存性を調査するために試料の冷却速度を高くする必要があり、1500-1600℃保持を保障する赤外線炉の選定に至るも加熱急冷装置作製が遅れている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H26-27年度に予定した、種々の酸素分圧での均一CaO-SiO2-(Al2O3)-P2O5系ガラス試料の局所構造解析またC2S/CaO-SiO2-(Al2O3)-P2O5系マルチフラックス試料中の酸素ポテンシャル分布調査を計画していた。 低酸素分圧で溶製したAl2O3入りガラス試料2種について、MAS-NMR測定を行いその解析を行うことができた。しかし含まない試料については均一ガラスが得られず実施できていない。また高温保持や高い冷却速度を得られる赤外線炉を選定するも加熱急冷装置作製まで至っていない。そのためこれを用いた均一ガラス試料の局所構造解析、また引き続く種々の酸素分圧でのC2S/CaO-SiO2-(Al2O3)-P2O5系マルチフラックス試料のラマン分光測定などが行えていない。以上を考慮して、研究が遅れているとの自己評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
第一に遅れている赤外線炉を主構成とする加熱急冷装置作製を急ぎ行う。 これを用いて、種々の酸素分圧における均一ガラス試料を作製してMAS-NMRまたラマン分析を行い、局所構造を解析する。 続いて、少量のC2SをCaO-SiO2-(Al2O3)-P2O5系融体に分散したマルチフラックスを所定の温度/酸素ポテンシャル下で溶融し、長時間保持しフラックス全体を雰囲気の酸素ポテンシャル下で平衡させた後に、異なる酸素ポテンシャルに切替えて所定時間保持し急冷させた試料を作製する。 試料のラマン分光分析を行い、酸化物中非架橋酸素割合の分布を調査して酸素ポテンシャル伝搬による局所構造変化を調べる。続けてリンの化学状態と非架橋酸素割合との相関性を調査する。またEPMA分析を行い、フラックスの厚み方向にC2S中および液相中のリン濃度分布を測定し、C2S/液相間のリン分配比を求める。 以上の結果より、フラックス内の酸素ポテンシャル分布を調査・決定しその「キャリア」易動度を求める。また、高酸素ポテンシャル域が大きくフラックス内でC2Sへのリン移行を促進する条件で、本マルチフラックスを用いたシリコンの脱リン実験を行い、シリコン中リン濃度の減少速度およびフラックス/シリコン間の見かけのリン分配比を測定する。 リン分配比10以上の効果的な脱リン条件を調査・確立した後に、リン・ボロンの同時除去を試行し有効性を確認する。
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