研究実績の概要 |
現在主流の脱酸剤を添加する方法では, 微細な酸化物が金属中に残存する. また, 脱酸剤を添加できないプロセスでは, 他の方法を考える必要がある. そこで本課題では、ジルコニア固体電解質酸素ポンプを応用する電気脱酸に注目した. これまでの研究では, カソード電極に脱酸対象の金属と異なる材料が用いられており, 電極酸化による化学的な脱酸の可能性や電極溶解による脱酸対象金属の汚染を否定できない. 本課題における平成27年度までの研究でも,リード線として用いた,モリブデン電極の溶銅中への溶解および酸化相の形成がみられており,化学脱酸との混合脱酸過程となっていたと考えられる。本研究では酸化反応による化学的な脱酸の影響を排除した電気脱酸の実施を実証するため,研究計画に記載した溶融金属相と同一の凝固金属を連続させ、後者をリード線とするこ新しい方法で電気脱酸を行った. カソード電極である銅固相部と脱酸対象の溶融銅を, 温度勾配中で連続的に共存させた. すなわち, カソード電極の影響を排除し, 純粋な電気脱酸が観測できる装置立てとした. 銅中の溶解酸素は溶銅/ジルコニア界面で外部電源から供給された電子と反応し, 酸化物イオンとしてジルコニア中を溶銅側から大気参照極側へその濃度勾配に逆らって移動した. 酸化物イオンは大気参照極側で電子を外部の電気回路へ戻し, 自身は酸素分子となって大気中に放出され, 溶銅中から取り除かれた. 酸素センサーの測定値により溶銅/CSZ界面の酸素濃度が, 赤外吸収法による酸素窒素同時分析装置により銅バルク内の酸素濃度がそれぞれ測定され, 両者共に酸素濃度が約600ppmから20ppmへ脱酸されていることを示した. 二つの観点から電気脱酸が実証された. また, 今回の実験方法および結果から実操業に対し, 金属の連続鋳造プロセスでの電気脱酸の応用を提案することができた。
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