現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26-H29年度の研究成果は、国際学術論文誌に、7編が掲載、1編が投稿中である。また、3編が投稿準備中である。 水溶液中イオンの熱力学諸量を決定するためには、固相からイオンに至る熱力学サイクルを完成させなければならない。固相から水溶液中イオンに変化する標準溶解ギブズエネルギ-は、水溶液中イオンと固相の標準生成ギブズエネルギ-の差として定義される。すなわち、未知の水溶液中イオンの標準生成ギブズエネルギ-を決定するためには、固相の標準生成ギブズエネルギ-および標準溶解ギブズエネルギ-を測定する必要がある。固相の標準生成ギブズエネルギ-を決定するためには、標準生成エントロピ-と標準生成エンタルピーを決定しなければならない。標準生成エントロピーを決定するためには絶対零度付近から熱容量を測定して第3法則エントロピ-を求める必要がある。標準生成エンタルピーを決定するためには、溶解熱カロリメトリ-を実施する必要がある。標準溶解ギブズエネルギ-を決定するためには、分光学的に飽和溶解度を測定する必要がある。水溶液中イオンの標準生成ギブズエネルギ-とファラデー定数を用いて電位に換算することで、電気化学的標準電位を決定できる。 2価のアルカリ金属イオンからなるモリブデン酸AMoO4(A=Ca, Sr, Ba) を固体の母相として水溶液中に溶出するモリブデン酸イオンMoO4 2-(aq)について、以上の複雑な熱力学サイクルを構築し、その標準生成ギブズエネルギ-、電気化学的標準電極電位および標準エントロピーの決定に成功している。 3価の希土類金属イオンからなるモリブデン酸RE(MoO4)(RE=La, Ce, Nd, Sm) を固体の母相とする場合についても同様の検討を推進している。 本研究によって体系化した方法論は固相と水溶液中イオンを統合する熱力学の概念を与えている。
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