研究課題
本研究の目的は、構成元素数が最小である二成分系バルク金属ガラスを創製し、過冷却液体中の熱力学的安定性とガラス形成能との関連を幾何学的原子配置の知見により明らかにすることである。今年度は二成分系バルク金属ガラスの創製に特化したガス浮遊装置を構築し、無容器凝固させることによりZr-Cu系バルク金属ガラスの作製に成功した。また、Zr中の添加酸素量を調節することにより、ガラス形成能を向上させ、ガラス形成が可能な組成範囲を広げることに成功した。さらに、無容器凝固法を用いることで、ガラス形成の際の臨界冷却速度と組成との関連を詳しく調べることを可能とした。また、本手法を適用することにより、2988Kの高融点をもつZrO2液体の放射光X線回折実験を実施し、液体構造解析に成功した。一方、二成分系バルク金属ガラスを形成する合金系の混合エンタルピーとは正反対の特性を示すが、二相バルク金属ガラスの形成と関連の深いNd-Ti系、Ce-Zr系合金の融解および凝固過程をガス浮遊装置と放射光X線回折により詳細に調べ、熱分析の結果と併せることにより、これらの系の平衡状態図を明らかにした。これらの系は、融点が高温であるだけでなく、液体の化学的活性が通常の合金融体と比べても高いため、平衡状態図についても十分な情報が得られていなかった。したがって、二相バルク金属ガラスの創製する上で重要な知見となる。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的は、1) 無容器凝固法による2 成分系バルク金属ガラスの創製手法の確立、2) 金属ガラス形成合金の幾何学的原子配置とガラス形成能との関連解明、そして、3) 過冷却液相における局所構造と凝固相選択との関連解明である。今年度は二成分系バルク金属ガラスの創製に特化したガス浮遊装置がほぼ完成し、Zr-Cu系バルク金属ガラスの作製に成功している。したがって、上記目的の1)については達成している。しかし、Zr-Cu系以外の合金については、バルク金属ガラスの創製に至っていない。2)および3)については、放射光X線回折実験を実施しデータを取得しているが、現在解析を進行中である。したがって、当初の計画通り、次年度以降に達成するべき目的とする。以上のことから、達成度を(2)とした。
現在、ガス浮遊装置のレーザー入射光窓をチャンバーの上下に設け、10気圧までの高圧雰囲気の実現を可能にするなど、試料の温度分布を一定にする工夫を施し、Zr-Cu系以外の二成分系バルク金属ガラスの作製を試みている。今後は、放射光実験を複数実施していくことにより、バルク金属ガラス形成合金の液体状態における幾何学的原子配置とガラス形成能との関連解明、そして、過冷却液相における局所構造と凝固相選択との関連解明を実施していく。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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