研究課題/領域番号 |
26420759
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研究機関 | 函館工業高等専門学校 |
研究代表者 |
水野 章敏 函館工業高等専門学校, 一般科目理数系, 准教授 (10348500)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 材料科学 / 高温融体 / バルク金属ガラス / 放射光X線 / 無容器凝固 / 過冷却液体 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、構成元素数が最も少ない二成分系バルク金属ガラスを創製し、過冷却液体の熱力学的安定性とガラス形成能との関連を幾何学的原子配置の観点から明らかにすることである。 今年度は、昨年度に製作した二成分系バルク金属ガラスの創製に特化したガス浮遊装置を使用し、ガラス形成能の高い合金系の探索を実施した。これまで、Zr-Cu合金系については、直径2mm程度のバルクガラスに成功し、また、Zr試料中の酸素濃度を適切に調節することにより、ガラス系性能が高くなることを見出している。今年度は、本研究手法によりバルクガラス化の可能な合金系の探索を実施したが、これまでのところ新たな合金系を見出す段階には至っていない。 一方、バルクガラス化の困難な系として正の混合エンタルピーを示すLa-Ti系合金とLa-Zr系合金を選択し、融解および凝固過程をガス浮遊法と放射光X線回折により詳細に調べた。さらに、熱分析および電子顕微鏡観察の結果と併せることにより、これらの合金系の平衡状態図を決定した。これらの系は融点が高温であるだけでなく、一般的な合金と比べても液体の化学的活性が高いため、平衡状態図について十分に正確な情報が得られていなかった。本成果は、二成分系バルク金属ガラスのガラス形成能を考察する上でも有用となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の目的は、1)無容器凝固法による二成分系バルク金属ガラスの創製手法の確立、2)金属ガラス形成合金の幾何学的原子配置とガラス系性能との関連解明、そして、3)過冷却液相における局所構造と凝固相選択との関連解明である。 昨年度において二成分系バルク金属ガラス創製に特化したガス浮遊装置を完成し、本装置を使用することにより、直径2mm程度のZr-Cu系バルク金属ガラスの作製に成功している。今年度は、放射光X線回折実験の結果から過冷却液体の構造情報を取得し、密度や粘性との関連を考察している。したがって、上記の目的については一部達成している。一方、Zr-Cu系以外の合金系として、急冷によりバルクガラス化が報告されているPd-Si系、Hf-Cu系、Fe-B系、Ni-Nb系を選択し、本手法を用いてバルクガラス化を試みたが、成功には至っていない。また、研究代表者の所属が変更となり、研究環境の構築等に時間を要し、研究の推進が滞ったため、進捗区分をやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は現所属機関において本研究を遂行するための研究環境を整えることを最優先とする。旧所属機関において実験は実施可能なため、適宜実験を実施して研究を遂行していく。また、放射光実験については、装置を既に施設に設置しているため、所属変更の影響はない。したがって、構造情報取得のための実験は随時実行していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の異動が年度途中であったため、研究の進行計画に変更が生じ、当該年度の物品費の購入が予定より少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
新たな所属機関において本研究遂行に必要となる実験機器や消耗品の購入などを計画している。
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