湯流れ速度が遅くなるメカニズムと発泡模型の熱分解と湯流れの動的平衡を明らかにするために、鋳造中の熱分解液化樹脂を溶湯充填初期、中期、末期に分けて行った。さらに、鋳造温度を変化させて発生する熱分解液化樹脂の種類・量と動的平衡との関係を調査した。 溶湯温度の高い鋳鉄の鋳造実験の結果、熱分解液化物はスチレンモノマ、ベンゼンが多く、トルエンも検出された。捕集された液化樹脂の量は溶湯充填末期で最も多い結果が得られた。このことから発泡模型の分解はスチレンモノマが主体であるが、モノマの部分分解が生ずることが明らかになった。また、熱分解炭素の生成も多かったことからベンゼンが炭化した熱分解炭素が生成していることが示唆された。 液化樹脂の量が少ない銅合金の鋳造実験の結果、熱分解液化物はスチレンモノマとベンゼンでほぼ100%を占めた。熱分解炭素は認められず、炭化までは進んでいないことが明らかになった。したがって、鋳造中の分解物の大半はガスであることが明らかとなった。 溶湯温度の高い鋳鉄では、ベンゼンやトルエンの生成量が比較的多く、ラジカル化したベンゼン環が生成したと考えられる。したがって、溶湯充填初期の動的平衡はスチレンモノマの生成とモノマガスの系外への排出する平衡状態であることが知られた。そして溶湯の充填が進むにつれてのラジカル化した物質の影響で液化物と炭化が進み動的平衡は液化物増加の方向に移動し、溶湯充填末期に多量の熱分解液化樹脂が残ることが明らかになった。 また、充填初期では、ラジカル化した物質により分解物の大量発生が生じることが明らかになり、このことが初期の充填速度を低下させていることが明らかとなった。 したがって、溶湯充填初期の爆発的な熱分解の現象を明らかにすることで本法のシミュレーション技術の開発が可能になることが示唆された。
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