地球温暖化対策として期待されている二酸化炭素回収貯留(CCS)において、そのCO2分離方法として排ガス中のCO2と吸収液との化学反応を利用した化学吸収法が実用化に最も近いと期待されている。実用化のためにはCO2を吸収した吸収液の再生エネルギーの削減が課題である。そこで本研究は、従来の加熱方式に替わる新奇なプロセスとして、多孔質中空糸膜を用いた減圧フラッシュ放散プロセスに着目し、膜の物理的・化学的特性がCO2放散速度に及ぼす影響を調査している。 H27年度の成果として、膜材料となるアルミナ粒子の表面にリン酸基を修飾し、それを吸収液と接触させることにより、CO2の放散が促進されることを見出した。これを受けて、H28年度は異なる酸性官能基でアルミナ粒子表面を修飾し、CO2放散への影響を調査した。平均直径0.3ミクロンの単結晶球状アルミナ粒子の表面に、昨年と同様のリン酸基、および、新たにスルホン基、カルボキシル基を導入した。官能基修飾したアルミナ粒子の等電点を測定したところ、いずれの官能基導入粒子も等電点が酸性側にシフトしており、酸性官能基が導入されていることが確認された。これらの官能基導入粒子と、官能基導入していないアルミナ粒子をCO2を吸収させたジエタノールアミン吸収液に添加し、放散への影響を調査した。その結果、どの酸性官能基導入粒子の場合でもCO2放散が促進されることが見出された。酸性官能基を導入したアルミナとの接触がアミン吸収液からのCO2放散を促進する効果的な手法であることが明らかとなった。 このことより、アルミナ製多孔質中空糸膜を使用したアミン吸収液からのCO2の減圧放散において、膜の細孔径、膜厚などの物理的性質とともに、表面の化学的性質を調整することにより、CO2放散を促進し、放散に要するエネルギーを削減できることが明らかとなった。
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