研究課題/領域番号 |
26420766
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
山村 方人 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90284588)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 乾燥 / ナノ粒子 / 蛍光 / 積層 / リアルタイム計測 |
研究実績の概要 |
粒子径の異なる蛍光・非蛍光性ラテックス粒子をカルボキシメチルセルロース水溶液に共分散させた溶液を、親水性表面処理を施したガラス基板上の塗布し、その乾燥過程における蛍光強度の時間変化をリアルタイム計測を行った。その結果、蛍光強度は乾燥過程で明瞭な2段階変化を示すことが観測された。すなわち乾燥初期には時間と共に蛍光強度が徐々に増加するのに対して、乾燥終期にはステップ状の強度増加が見られた。水蒸発に伴う液膜サンプルの質量減少、及び、液膜表面で反射したレーザ光の2次元反射像の時間変化を同時計測したところ、後者のステップ状強度増加が見られる乾燥時刻ではサンプル中に残留する水分量は少なく、サンプル面で明瞭なレーザ光の散乱が生じることが分かった。散乱開始時の2次元反射像が非対称であることから、この散乱は液内の分散粒子によるものではなく、粒子堆積層の内部へ気液界面が侵入する際に生じる湾曲したメニスカスの形成によるものと推察された。これらの事実と推察から、乾燥後期におけるメニスカス湾曲によって毛管圧力が液中に生じ、その負圧によって蛍光粒子が液表面への急激に移流することで、ステップ状の強度増加が現れるものと考えられる。この考察を裏付けるために、蛍光強度の予測モデルを構築し、実験結果と比較検討を行った。モデル化にあたってはランベルトベールの法則が成り立つと仮定し、厚み方向の発光と光吸収を考慮した。濃度分布が急峻な場合には物理的に妥当な強度分布が得られなかったので、厚み方向の座標を2000分割した仮想的な層を考え、各層で光強度の算出を行いそれらの積算する手法を考案した。その結果、乾燥後期に表面近傍の粒子体積分率が増加することを考慮すれば、実験結果と定性的に一致する蛍光強度時間変化が得られることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は蛍光強度、乾燥速度、2次元反射像の同時計測により粒子積層構造の発達過程をリアルタイム計測可能なシステムを構築し、乾燥過程において蛍光粒子の2段階偏析が生じることを実証することに成功した。これは従来推察されているに過ぎなかった現象の存在を実験的に明らかにしたものである。更に実測結果を定性的に説明可能な蛍光予測モデルを提案しており、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
過去の理論的研究では、粒子積層時には表面偏析層内部で粒子はランダム最密充填構造を取るのに対して、偏析層下部では初期体積分率を保持するとされてきた。しかしながらこの理論を適用して得られた蛍光強度の予測値は、実測値を定量的に表現することが困難であることが平成26年度の研究で明らかとなった。これは液表面で粒子が必ずしも瞬時に最密充填構造に達せず、乾燥初期にはより疎な充填構造を保持した後に、徐々に最密構造へと漸近することを示唆しているものと考えられる。そこで蛍光強度の実測値と予測値との比較から、粒子充填構造の時間発展を記述する新しい物理モデルの提案を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた膜厚測定システムよりも低価格な同等品を購入可能であったため
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度は蛍光ラテックス粒子の購入費用として15万円程度が必要と見込まれるので、合算使用を予定している。
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