研究課題/領域番号 |
26420766
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
山村 方人 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90284588)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 乾燥 / ナノ粒子 / 蛍光 / 積層 / リアルタイム計測 |
研究実績の概要 |
前年度までに、密度が等しく粒子径の異なる2種類のラテックス粒子が高分子溶液に共分散した系における粒子積層現象を、実時間蛍光法を用いてリアルタイムで計測することに成功した。その結果、乾燥による膜収縮速度と粒子ブラウン運動速度の比で定義されるペクレ数が100以上の高速乾燥条件において、蛍光強度の増加すなわち小径蛍光粒子の優先的表面偏析が乾燥中に生じること、且つ、乾燥初期の偏析はゆるやかに進行するのに対して後期のそれはある乾燥時刻でステップ的に生じることが明らかになった。 しかし過去の理論的研究(Cardinal et al., AIChE J. 2010)によれば粒子積層現象はペクレ数のみならず、粒子沈降速度と膜収縮速度の比である沈降数にも依存することが示唆されている。特に大粒子の密度が小粒子のそれより高い場合には、高沈降数である大粒子が選択的に底面に積層することで、結果的に小粒子の表面偏析を促進するものと予想された。 この予想を実験的に実証するために、本年度はラテックス粒子に比べて4倍高い密度を有する二酸化チタン粒子を大径粒子として選択し、密度差による粒子運動の差異が乾燥中の積層構造形成に与える影響を検討した。その結果前年度までの結果とは逆に、乾燥中に蛍光強度が低下する高分子濃度が存在することが明らかとなった。これは小径蛍光粒子が底面に積層することを示唆しており、上述の予想とは逆の結果であった。さらに液中の高分子の存在状態を把握するために粒子表面への高分子鎖の吸着量測定を行ったところ、ラテックス粒子表面とは異なり、二酸化チタン粒子表面には高分子鎖が物理吸着していることがわかった。しかし高分子吸着の事実のみでは上述の蛍光強度低下現象を説明することはできず、次年度以降さらに詳細な検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までに構築した計測技術を密度が異なる異種粒子分散系へ適用し、従来の理論的予測では説明できない蛍光強度低下が乾燥中に現れることを見出している。実験事実の理論的な考察にはさらに詳細な検討が必要であるが、これは理論予測とは異なる積層構造が発現していることを示唆しており、乾燥による粒子積層現象を系統的に整理する端緒となる重要な発見であることから、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
大径粒子表面への高分子吸着が小粒子の表面偏析を抑制するとの実験結果を物理的に説明するため、高分子吸着量およびその吸着状態が異なる二酸化チタン/ラテックス粒子分散系溶液を調製し、その乾燥中の粒子積層状態を比較検討する。具体的には分子量あるいは分子構造の互いに異なる3種類の高分子を用いて粒子表面における吸着量測定と乾燥実験を進め、吸着量によって大径粒子の液中の充填構造は変化するのか、充填層間の空隙サイズと小径粒子径の比を変化させると積層状態は変化するのか、といった疑問を解決すべく系統的な実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用する粒子をポリスチレンラテックス粒子からより安価な二酸化チタン粒子へ変更したため
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度も継続して二酸化チタン粒子を用いた実験を計画しており、粒子購入用の物品費として用いる。
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