研究課題/領域番号 |
26420767
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
森貞 真太郎 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60401569)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 粒子膜 / 自己集積プロセス / 高分子電解質 / 高分子ブラシ / シリカ粒子 |
研究実績の概要 |
本研究では,高分子ブラシによる表面改質を施したシリカ粒子を作製し,得られた粒子を移流集積法に適用することで,粒子間に間隔の空いた規則配列(非最密充填構造と呼ぶ)を有する粒子膜を作製することを目的としている.平成27年度に得られた研究結果は以下の通りである. 1.前年度に作製したpoly(3-acrylamidopropyl trimethylammonium chloride)修飾シリカ粒子(PAPTAC-Si)とpoly(vinylbenzyl trimethylammonium chloride)修飾シリカ粒子(PVBTA-Si)を移流集積法に適用し,粒子膜の作製を試みた.PAPTAC-Siを用いた場合,用いる分散液の粒子体積分率粒子が高くなるにつれ,粒子が凝集した構造をとるようになり,さらに体積分率が高くなると数珠状の粒子凝集体が一面に広がった構造の粒子膜が得られた.これは,粒子間に働く横毛管力が,表面修飾されたPAPTACに由来する静電斥力と立体斥力を上回ったために,粒子の凝集が起きたのだと考えられる.一方,PVBTA-Siを用いた移流集積法の馬場合,適切な粒子体積分率の分散液を用いることで非最密充填構造の粒子膜を得ることに成功した.これより,PVBTAに由来する静電斥力と立体斥力は,粒子間に働く横毛管力よりも強く,粒子同士の凝集を防ぐことができたのだと考えられる.また,PVBTAはベンゼン環を有することから,PAPTACよりも剛直な高分子電荷質だと推測される.従って,PVBTAはシリカ粒子表面から外部に向けて伸びた状態で存在するため,粒子の凝集を防ぐことができたのではないかと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
移流集積法による非最密充填構造を有する粒子膜の作製に適した高分子を見つけることができたため,当初の予定通り,粒子膜構造の規則性の向上や,高分子ブラシ長の制御による粒子間隔の制御といった実験に取り組むことができるため.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度までに,PVBTA-Siを用いた移流集積法による非最密充填構造の粒子膜の作製には成功している.そこで,平成28年度は以下の研究を実施する予定である. 1.粒子配列の規則性の向上を目指し,粒子膜作製の条件(温度,粒子体積分率,pH,イオン強度など)を変えることで,得られる粒子膜構造に及ぼす影響について検討を行う. 2.原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization, ATRP)法により,表面に修飾する高分子鎖長と修飾密度の制御を試みる.ATRP法によるシリカ粒子への高分子ブラシの導入に関する研究はこれまでいくつか報告されていることから,PVBTAに適したATRP法を用いて高分子ブラシ修飾シリカ粒子を作製し,移流集積法による粒子膜作製に適用する.用いたシリカ粒子の高分子ブラシ鎖長および修飾密度と得られた粒子膜の粒子間距離の相関 を検討することで,非最密充填コロイド粒子膜の構造制御の実現を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は10万程度であり,ほぼ予定通りの予算使用状況だと考える.
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次年度使用額の使用計画 |
生じた次年度使用額は実験試薬として使用する予定である.
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