研究課題/領域番号 |
26420771
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研究機関 | 奈良工業高等専門学校 |
研究代表者 |
中村 秀美 奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 教授 (70198232)
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研究分担者 |
林 啓太 奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 助教 (10710783)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 撹拌翼 / バイオリアクター / 好気性微生物 |
研究実績の概要 |
新規に開発されたエレメント積層型撹拌翼(MSE 翼)は、網目構造を持った板を何枚にも重ねてハニカム構造を持つ撹拌翼であり、流体は積層内で繋がっている多数の網目を通る際、分割・合流により混合されるとともに、乱流や渦流等によっても混合されるという特徴を有する。また、従来型の撹拌翼と比較して格段に大きな表面積を有するために剪断特性に優れており、穏和な条件で撹拌できるため好気性微生物の大量培養を目的としたバイオリアクターへの適用が期待される。 1.MSE 翼の流動特性の検討 翼径、板厚、孔径、積層枚数等を変化させたMSE翼を設置した撹拌槽を用いて、撹拌翼の基本特性として最も重要である撹拌トルクを測定して、MSE翼の流動特性を実験的に検討した。孔径の大きなMSE翼は従来の6枚ディスクタービン翼より撹拌動力が大きく、積層枚数が10枚より20枚の方が効率よく撹拌できることが分かった。また、翼設置高さ(設置高さC/槽径D比)を変化させてもMSE翼では動力数にほとんど影響がなかった。一方、MSE 撹拌翼の翼径を変化させた場合、翼径d/槽径比Dの値が大きくなると、動力数は小さくなった。 2.MSE 翼の酵母培養性能に対する最適条件の探索 撹拌槽に培地と好気性条件下でも発酵能力を有する特異株の酵素を入れ、酵母の増殖速度やアルコールの発酵量の経時変化を測定したところ、MSE 翼の方が6枚ディスクタービン翼より酵母を効率よく増殖し、アルコールを約2倍程度効率よく発酵できることが分かった。ただし、撹拌翼形状の違い、撹拌回転数等の操作因子を変化させて得られる酵母培養性能の最適条件ついてはさらなる検討が必要であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MSE翼の動力特性についてはほぼ検討が終わり、従来の6枚ディスクタービン翼に比べてMSE翼の優位性が明らかとなった。 酵母の培養性能についてもMSE翼の優位性が明らかとなったが、最適条件を明らかにするまでには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
MSE翼の酵母培養性能に対する最適条件のさらなる探索を続けるとともに、MSE翼の表面ガス吸収及び通気ガス吸収における酸素移動容量係数の測定や酵母の生菌および死滅菌観察による剪断応力特性の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時の備品として倒立型リサーチ顕微鏡 1,400,000円を申請したが、実際の配分額は減額されているために、今年度の繰り越し金で不足分を補う予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の配分額1,500,000円と繰越金99,186円を合わせた金額1,599,186円のうち大部分は酵母の生菌と死滅菌の直接観察のために、備品として購入する倒立型顕微鏡に充てる。 そのほかは研究分担者への分担金、試薬、ガラス器具等の消耗品費、学会発表等の旅費を予定している。
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