本研究では,層状化合物の新規層剥離法の創出と,この手法によって得られたナノシートの再構築により,触媒・吸着剤などの機能性材料開発を行うことを目的にした。本研究の実施により,以下のように今後の研究活動の基盤となる成果がいくつか得られた。 [炭素系材料の新規層剥離法開発ならびに得られたナノシートの再構築による多孔体合成に関して] 1.水の急速な相変化を利用した手法により,ナノシートの微細化を抑制しながら酸化グラファイトの層剥離を行い,シート径の大きな酸化グラフェン分散液を得ることができた(平成26年度の成果;本内容について学術論文並びに国際学会で成果発表を行った)。2.1の手法によって得られた酸化グラフェン乾燥体を短時間マイクロ波処理することで,欠陥密度が制御され,炭素純度の高い(99%以上)グラフェン系炭素材料を得ることができた(H28年度の成果;本内容に関して特許出願を行った)。今後,本試料を電極・触媒材料へ利用することを予定している。 [金属酸化物・水酸化物系材料の層剥離ならびに得られたナノシートの再構築による多孔体合成に関して] 3.Mg/Al系層状複水酸化物から得られるナノシート分散液を急速に凍結することで,径数百nm,長さ数十μmの繊維状物質を得ることに成功した。また,これを焼成して得られる複合酸化物が固体塩基触媒として有効に働くことを示した(H27年度の成果;国内・国際学会で成果発表を行った)。今後,本試料を高温・水蒸気雰囲気下で作用するCO2吸着剤として用いることを予定している。4.層状ゼオライト前駆体から有機構造規定剤を抽出する新手法の開発を行った。この手法の開発により,層状化合物を構成するゼオライトナノシートを利用した機能性材料の開発が進むことが期待される(H28年度の成果;国内・国際学会で成果発表した)。今後,本手法を担持触媒開発に応用することを予定している。
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