研究実績の概要 |
本研究では、高温高圧水中での重質油水素化改質における温度の影響を明らかとすることを主な目的としている。初年度は水素化反応の基礎反応として、高温高圧水中での固体触媒存在下における水性ガスシフト反応を行い、反応場の水密度が低いほど反応が促進されること、これは高水密度域にて水分子が触媒を被覆する影響が大きいためであることを明らかとした。次年度は、高温高圧水中に一酸化炭素を導入した系にて半回分式装置を用いた重質油改質を673 K~723 Kにて行った。水素を共存させた系との比較により、高温高圧水中における水性ガスシフト反応由来の水素を用いた改質の有効性を確認した。反応温度の影響を評価した結果、693 Kにて最も軽質化した油が回収できることを見出した。高温領域ではコーク生成促進や油分抽出促進による滞在時間減少、低温領域では油分分解速度が低下する一方で滞在時間の増大による水性ガスシフト反応由来の水素供与の促進が生じており、これらのバランスによって最適な改質温度が存在すると考えた。 最終年度では、研究期間全体を通じて開発を進めた温度勾配付与型高圧処理器を用いてバイオマス混合物モデル油の分離挙動を評価した。処理器は高さ300 mm, 内径10 mmの蒸留塔形状で、塔内温度分布の測定を行うことができ、533 K,10 MPaでの運転が可能である。モデル油として、メタノール、グリセリン、ラウリン酸メチルの混合物を用いた。一例として、それぞれのモル組成が94%,2%,4%の供給液を塔中央部から供給し、3.9 MPaにて塔底473 K、塔頂448 Kとした際に、塔底のそれぞれの組成は37%,18%,45%となり、グリセリンとラウリン酸メチルの濃縮を行うことができた。このように、高温高圧条件にて温度勾配を与えうる処理装置を開発することができた。
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