本申請課題の目的は、物質移動や熱移動が十分に速いマイクロリアクターにおいても、高温の気相反応等では反応が速いために移動速度が律速段階になる可能性があり、この問題をマイクロリアクターに構造体触媒を用いて解決する、というものである。平成28年度は前年度までの結果を元に、フィン状構造材料、エッチングを施した構造材料等について反応性向上の原因を明らかにするべく検討を行った。フィン状構造材料については、メタノール水蒸気改質反応、水素燃焼反応ともに低温側でプレート状触媒と比較して反応性が向上する原因について、実験結果に基づくシミュレーションモデルを構築して検討を行った。シミュレーションにおいては対流と拡散の流束の合計に対する対流による流束の度合いから対流の影響を評価した。その結果、低温において対流による流束の影響が相対的に大きくなることがわかった。フィン状の構造については対流の影響が大きくなると流体が構造体触媒の上下に移動し、触媒との接触の効率が向上するために反応性が向上したものと考えられる。また、フィン状構造体触媒の反応器内への充填方法が反応性に影響を及ぼすことが実験的に確認され、この点についてもシミュレーションにより検討した結果、対流による流束の影響が最も大きくなる充填方法が、反応性が最も高いことがわかり、フィン状構造体触媒においては対流の効果を大きく引き出す構造、充填方法、操作方法等により気相反応の反応性を向上させられることがわかった。 また、化学エッチングを施した構造体材料の微細孔内を触媒化してマイクロリアクターとして用い、メタノール水蒸気改質反応において粒子充填層触媒よりも高い反応性を示すことを見出した。これは孔径数ミクロンの微細孔内で反応させることにより外部拡散の影響を小さくできたためであると考えられ、この構造体触媒により気相反応を高性能化できる可能性があることが示された。
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