研究実績の概要 |
固体塩基の塩基強度と量は基本的な物性である。この測定には,CO2が使用されている。しかし多くの場合CO2と塩基点との相互作用は化学反応であるため,その使用には限界がある。そこで,酸性の弱い炭化水素を用い,室温以下の温度での吸脱着により評価することを構想した。本研究の目的は,固体塩基の塩基評価法として,不活性な炭化水素の昇温脱離を検討することにある。 固体塩基として, 水酸化物の熱分解で調製したCaOとMgOを用い, He気流中に保持し773 Kで活性化した後, プローブ分子を吸着させた。吸着は条件検討の結果,143 K,プローブ0.02 mlを導入することによって行うこととした。同温度で排気後, 133 Kまで温度を下げ, 1 K/minで昇温した。プローブとしてプロピレン, プロパン, イソブタン, イソブテンを用いた。脱離した炭化水素はFIDにより検出,TPD曲線に理論式を当てはめて活性化エネルギーを求めた。 773 Kで活性化したCaOからの,各種炭化水素の昇温脱離の結果,四種類の炭化水素は脱離ピークを与え,ピーク温度は,プロパン,イソブタン,プロピレン,イソブテンの順に高くなり,それぞれ172 K,193 K,206 K,228 Kであった。CaOは,1173 Kで熱処理すると,ほとんど活性を示さなくなる。1173 Kで活性化したCaOでは,四種類の炭化水素の脱離ピークは低温側へ移動した。よって,これらのプローブ分子は活性点に吸着していると考えられた。一般に炭化水素分離用の強極性カラムでは,保持時間はプロパン,プロピレン,イソブタン,イソブテンの順となる。脱離温度の順はこれとは異なり,特にプロピレンの脱離が高温で見られることから,プローブと表面の相互作用は,分極の大きさに依存するものではなく,酸塩基的な相互作用であるとした。
|