本研究では、三次元階層的なナノ空間構造と形態(マクロおよびメソスケールの規則的な細孔空間構造)を精密設計した無機多孔性材料の機能を巧みに活かした触媒・光触媒材料の創出と環境浄化反応への応用に取り組んでいる。本年度は、環境や生活健康分野への応用を志向し、二酸化チタン(TiO2)などの光触媒材料との複合化に用いる高機能な担体材料として、細孔空間構造を制御した多孔性シリカの利用を中心に検討した。また、表面改質による分解対象物質の吸着・濃縮特性の制御についても併せて評価し、更なる高機能化に取り組んだ。具体的には以下の項目を中心に研究を行った。(1) 昨年度より進めている液相光触媒反応系での性能評価に加え、気相光触媒反応系への展開を目的として、アセトンやエタノールなどの揮発性有機化合物の蒸気吸着試験を行った。分子のサイズ・極性・水素結合形成の有無により吸着状態は大きく異なることがわかった。特にアルコール蒸気の吸着試験では、高相対圧領域においてマクロスケールの細孔構造の存在に起因する特異な吸着性能を示すことを見いだした。(2) 空気中に希薄に存在するアセトンやエタノール蒸気などの分解除去において、光触媒活性と吸着特性には良い相関関係が見られた。マクロおよびメソスケールの規則的な細孔空間は特異な反応場として利用でき、光触媒性能の向上に大きく寄与することを示した。(3) 細孔空間構造の制御に加え、ヘテロ原子としてのアルミニウム種の導入とイオン交換によるアルカリカチオンの導入により表面特性も制御した多孔質シリカを調製し、TiO2光触媒との複合化による性能評価を実施した。光触媒活性とトルエンガスの吸着量・吸着速度には比較的良い相関関係が見られ、適切な制御により高性能な光触媒材料が設計できることを示した。
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