研究課題/領域番号 |
26420789
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研究機関 | 山口東京理科大学 |
研究代表者 |
池上 啓太 山口東京理科大学, 工学部, 准教授 (60372786)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 水素製造 / 水分解 / 光触媒 / 硫化物 / Z-スキーム |
研究実績の概要 |
本年度はMn-Cd系複合硫化物の高活性化に有効な助触媒の探索と、硫化物系光触媒に酸素発生光触媒を粒子同士で接合させたZスキーム型光触媒の開発を検討した。Mn-Cd系複合硫化物にRu, Pd, Ptなどの金属を担持し助触媒効果について検討した結果、光析出法によるPt担持が最も有効であることがわかった。Pt担持Mn-Cd系複合硫化物の光触媒反応前後におけるPtの電子状態および構造を解析することにより、光触媒活性向上の要因を調べたが、これら物性との相関は見られなかった。そのためPt担持効果の解明を今後引き続き検討する。 さらにPt担持Mn-Cd系複合酸化物に酸素発生光触媒であるリン酸銀およびBiVO4を析出させて複合粒子を合成し、Zスキームによる水分解反応を検討した。得られた試料の構造をXRDで調べたところ、各構成粒子の構造が維持された状態で複合していた。またSEM像では、硫化物粒子とリン酸銀粒子またはBiVO4粒子との接合粒子が観測されたが、その割合は低かった。 各複合粒子型光触媒の純水における水分解活性を各構成粒子の単独および物理混合試料と比較検討した。硫化物-リン酸銀系および硫化物-BiVO4系の両方において水素発生が見られ、その活性は単なる物理混合試料に比べて高かった。しかしながら、硫化物単独試料に比べて水素発生速度は低下した。また、リン酸銀単独試料では酸素発生が見られるのに対して複合粒子径では失活した。 このような酸素発生が観測されない要因を調べるために逆反応に基づく酸素消費速度を求めた。複合粒子および物理混合試料のいずれにおいても酸素消費が観測されるが、その速度は粒子接合試料の方が高い傾向を示した。以上の結果から、粒子複合効果により水素発生速度は向上するが、逆反応速度も高まるため水の完全分解が進行しなかったと推定される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
助触媒効果の要因は局所構造の観点から26年度中に解明する予定であったが、光触媒活性向上に関連する直接的な因子の解明までには至らなかった。そのため、Pt担持効果の解明を継続して検討する必要があるため遅れが発生いている。最適化した硫化物系光触媒に対して酸素発生光触媒を複合し、Zスキームによる水分解反応を検討する課題については、複合粒子型光触媒の合成および光触媒活性評価は当初の予定どおり実験が進行しており、H27年度の検討に向けた基盤となる結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
26年度に引き続き、酸素発生用光触媒との組み合わせによる水の完全分解を検討する。前年度では、犠牲剤のない系で複合粒子系光触媒において水の完全分解を実現しようとするものであったが、27年度は犠牲剤(硫化ナトリウム+亜硫酸ナトリウム)が存在する系において、酸化された犠牲剤分子を還元するとともに酸素発生可能な半導体を探索し、水素発生光触媒と酸素発生光触媒を分離したシステムにおける水の完全分解を検討する。そのためには犠牲剤分子の酸化還元電位を電気化学的手法により調べ、その酸化還元電位と水の酸化電位の両方を満足するバンド構造を持つ半導体を探索する。犠牲剤濃度、反応系のpHおよび水素発生用光触媒微粒子と酸素発生用光触媒微粒子の重量比を変化させることにより水の完全分解が可視光照射下で繰り返し安定に進行する条件を見出す。
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