研究実績の概要 |
27年度の検討で水素発生光触媒として最適化したPt担持Ni-Mn-Cd系硫化物に対する酸素発生光触媒の最適化を検討するとともに、それらを組み合わせたZスキーム反応系における水分解特性を評価した。酸素発生光触媒としてBiVO4を用い、電子移動の促進および水分解の逆反応の抑制を目的として、ヨウ素系酸化還元媒体(NaIO3)存在下でのBiVO4の光触媒活性に及ぼすRuOx担持効果について調べた。BiVO4光触媒はRuOxの担持により酸素発生反応活性が向上し、担持量が1%において最大活性を示した。さらなる向上を目指してRuOx担持BiVO4に対してCoOx, NiOxおよびPtナノ粒子を担持して2元系での助触媒担持効果を調べた。第2成分として担持した金属ナノ粒子の粒径は2~5 nmであり、高分散状態でBiVO4上に担持されていることが示唆された。第2成分の助触媒担持によりRuOx/BiVO4の光触媒活性は向上し、その中で0.4% CoOx担持試料が最も高い活性を示した。これら2元系助触媒を用いることでBiVO4単独試料に比べて酸素発生速度が約2倍向上した。 最適化した酸素発生光触媒である0.4%CoOx/1%RuOx担持BiVO4を水素発生光触媒である1%Pt担持Ni-Mn-Cd系硫化物と組み合わせて、ヨウ素系酸化還元媒体存在下のZスキーム型反応系を構築し水分解特性を調べた。反応初期において、水素および酸素の発生が見られたが、時間経過とともに酸素発生速度の低下が認められた。この結果は酸素発生光触媒上での逆反応の抑制が助触媒担持後も十分でなかったことが要因として推定される。しかしながら、Ni-Mn-Cd系硫化物を用いたZ-スキーム反応系において、初めて水の水素と酸素への分解が見られたため、今後、量論比での持続的な水分解を実現するために逆反応の要因をさらに解明する必要がある。
|