研究課題/領域番号 |
26420793
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
董 金華 東京工業大学, 資源化学研究所, 助教 (80527838)
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研究分担者 |
上田 宏 東京工業大学, 資源化学研究所, 教授 (60232758)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Quenchbody / Influenza virus / immunoassay |
研究実績の概要 |
本年度はインフルエンザウイルス検出用Quenchbodyの作製に成功した。まずインフルエンザウイルス認識抗体 (Fi6v3) の可変領域遺伝子VH/VLをpUQ1HおよびpUQ2ベクターにクローニングし、シングルラベル用のFab発現ベクターpUQ1H-FI6v3ならびにダブルラベル用のpUQ2-FI6v3を作製した。その後両ベクターを用いて大腸菌SHuffle T7 LysEを形質転換し、Fab断片を発現し、TALON IMACゲルを用いて精製した。その後、TCEPゲル(Immobilized Tris (2-carboxyethyl) phosphine-hydrochloride Disulfide Reducing Gel)を用いてVH及びVLのN 末近傍に導入したシスティン(Cys)残基の還元を行った。その後、還元されたFabとATTO520-maleimideとを混合し,25℃で遮光静置し、蛍光修飾を行った。さらに抗FLAG ゲルで精製を行い、遊離の蛍光色素を除去した。SDS-PAGEによる分離後、蛍光光度計(JASCO F-8600)を用いた蛍光測定ならびに組換えH1N1 A/New Caledonia/20/1999 HAの効果の検証を行った。大腸菌細胞質での二種類のFabの大量発現ならびに精製に成功した。ATTO520標識後のUQ-bodyのSDS-PAGEと蛍光観察の結果,FabのH鎖(Fd鎖)とL鎖の標識が確認された。ダブルラベルUQ-bodyに各濃度のH1N1 HAを加えて蛍光を測定したところ、HA濃度依存的な最大4.5倍の蛍光強度増加が見られ,検出限界は10-8M 以下であった。一方、シングルラベルUQ-bodyは反応性が低かった。ダブルラベルUQ-bodyの場合、抗原不在時においてTrp残基による蛍光色素のクエンチに加え、二つの鎖に標識した色素間でクエンチが起こり,抗原添加によりそれらが効果的に解除されたことが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本プロジェクトは当初ファージ提示法によって取得した抗インフルエンザウイルス抗体A3を用いる予定だった。しかし、A3のQuenchbodyの抗原応答性はよく無かったため、FI6v3抗体を用いることにした。FI6v3抗体はより多い種類のインフルエンザウイルスと結合するので、汎用性があると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は申請書通り、研究を進める予定である。まず測定法の感度をあげるために本法の最適化を行う。本法では抗体のFab断片を用いる。しかし、天然抗体は2つのFab部分を有するため、avidity効果により、より強くウイルス粒子上の抗原に結合できると考えられる。出来るだけ天然抗体に近い検出素子を作製するため、Fabの軽鎖定常領域CLの末端に2量体化タンパク質、WA20を融合させ、大腸菌にて発現を行う。WA20は2本の長いαヘリックスが連結した構造をしており、2つのWA20分子がお互いにはさみこむように組合わさり、安定な二量体を形成する。この設計によって、2つのFab断片がWA20を通して二量体を形成し、天然抗体に近い分子が作製される。その後、蛍光色素でQ-bodyをラベルし、組換えHAと不活化ウイルスを用い、二量体化したQ-bodyの検出感度を評価する。さらに次年度にかけて,同様の手法でFabの4量体化も試みる。測定方法を確定した後、 弱毒性ウイルスA/Aichi/2/68(H3N2)及びA/Puerto Rico/8/34(H1N1;PR8)を本法にて検出してみる。
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次年度使用額が生じた理由 |
マイクロプレートウオッシャー及び試薬・消耗品を当初の予定より安く購入でき、また一部の試薬・消耗品の購入を延期したため、繰越額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度購入を延期した試薬の購入費に充てる予定である。
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