研究課題/領域番号 |
26420793
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
董 金華 東京工業大学, 資源化学研究所, 助教 (80527838)
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研究分担者 |
上田 宏 東京工業大学, 資源化学研究所, 教授 (60232758)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | インフルエンザウイルス / 抗体 / Quenchbody |
研究実績の概要 |
本年度はまずインフルエンザウイルス検出用Quenchbodyのウイルスとの結合性を確認した。北海道大学大学院医学研究科の大場雄介教授らよりご恵与いただいた弱毒性ウイルスA/Aichi/2/68(H3N2)及びA/Puerto Rico/8/34(H1N1;PR8) (10^7 PFU/ml)をマイクロプレートに固定化し、ブロッキング後に蛍光色素ATTO520で修飾したQ-body (4 μg/ml)を加えて室温で2時間インキュベートした。その後、FabにあるHisタグをHRP修飾抗体で検出したところ、対照としたストレプトアビジン(4 μg/ml)より高いシグナルを検出することが出来た。また、Q-bodyへのA/Aichi/2/68(H3N2)ウイルス(2.5 x 107 PFU/ml)の添加により、その蛍光強度が1.15倍まで上昇し、Q-bodyによるウイルス粒子の検出に原理的に成功した。一方、A/Puerto Rico/8/34(H1N1; PR8)ウイルスのQ-bodyアッセイでは明らかな蛍光上昇が見られなかった。現在,本法では抗体のFab断片を用いているが、天然抗体は2つのFab部分を有するため、avidity効果により、より強くウイルス粒子上の抗原に結合できると考えられる。そこで、より天然抗体に近い検出素子を作製するため、信州大学新井亮一博士らにより作製されたタンパク質WA20及びその安定化変異体SUWA20をFabに融合した。WA20は2本の長いαヘリックスが連結した構造をしており、安定な二量体を形成する。具体的にはFabの軽鎖定常領域CLの末端に、WA20あるいはSUWA20を融合させた。SHuffle T7 lysY大腸菌株にて発現させ、SDS-PAGE分析したところ、蛋白質の発現が確認できた。さらにELISAにおいて、いずれのウイルスとの結合も確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本プロジェクトにおいては当初、ファージ提示法によって取得した抗インフルエンザウイルス抗体A3を用いる予定であった。しかし、A3より作製したQuenchbodyの抗原応答性は良好とは言えなかったため、FI6v3抗体を用いることにした。FI6v3抗体はより多いクラスのインフルエンザウイルスと結合するため、汎用性があると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は申請書通り、研究を進める予定である。まず平成27年度に作製したWA20及びSUWA20融合Fabを用いて、Q-bodyを調製して、それらの性能等の詳細を調べて、評価する。抗体のavidity効果により、より強くウイルス粒子上の抗原に結合できると考えられる。さらに、リンカーによる連結された2個WA20蛋白質をFabに融合して、Fabの4量体化も試みる。作製した各種Q-bodyを、組換えHAと不活化ウイルスを用い、アッセイの検出感度を評価する。また研究協力者である国立感染症研究所及び東京都医学総合研究所で、Q-bodyの免疫測定法としての臨床応用の可能性を評価する。また本研究室では、Q-bodyによるバイオイメージングにも成功した。Q-bodyによる免疫染色は洗浄ステップを省くことが可能であるため簡単また短時間で操作が可能である。今後、ウイルスに感染された細胞にQ-bodyを加えて、共焦点蛍光顕微鏡を用いてQ-bodyとウイルスとの結合を確認する。さらに患者の体液等の臨床サンプルを用いて本法の実用性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬と消耗品等を当初の予定より安く購入でき、繰越額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度購入を延期した試薬の購入費に充てる予定である。
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