昨年度はBY4741株にディスプレイしたモデル抗原ペプチド(MP)の提示量を蛍光マルチウェルプレートリーダーにより評価した。本年度は、さらに定量の精度を上げるため、イメージサイトメータを用いた定量評価を行った。培養至適条件について再現性の確認を行ったところ、昨年度のデータとは異なり、40~48時間で最も多くのMPタンパク質分子が提示されることが明らかとなった。イメージサイトメータでは自家蛍光由来のノイズを除去できるため、より精度の高い本法で得られた至適培養時間を、今後適用することとした。 また、培養調製後のMPディスプレイ細胞の保存期間について、温度、保存液組成、pHの検討も進めた。現有の震盪培養機で、一連の動物投与実験に必要な細胞量を確保するには、2週間分以上を確保する必要が想定される。そこで、冷蔵条件(4℃)において2週間以上、抗原タンパク質の安定性が認められるかどうか検討を加えた。イメージサイトメータを用いた定量評価では、4週間静置後の細胞において、最大30%程度の蛍光強度の減弱が認められ、ディスプレイされた表層MPの量が大幅に減少している事が明らかとなった。保存液として用いたPBSのpHや細胞密度についての条件を複数検討したが、改善はみられなかった。さらに、本研究課題で予定していた動物投与試験のセットアップまでに時間を要するため、凍結保存条件におけるタンパク質の安定性についても検討を行った。MPディスプレイ酵母細胞にグリセロールを添加し、凍結保存期間を変えて、融解後の表層提示量の定量を開始している。
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