研究課題/領域番号 |
26420806
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
境 昌宏 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20301963)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ガルバニック腐食 / アルミニウム / CFRP / 陽極酸化処理 |
研究実績の概要 |
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)とアルミニウムとが接した際に,アルミニウムの腐食が助長される「ガルバニック腐食」について,電気化学的測定を行うことで調べた。アルミニウムには純アルミニウム1050および1100,あるいは高強度アルミニウム合金7075を用い,CFRPには強化繊維がPAN系炭素繊維,母材がエポキシのものを用いた。試験液には海水の塩分濃度と同程度の3.5%NaCl溶液を用いた。試験液中にCFRPとアルミニウムとを浸漬し,両者を無抵抗電流計を介して短絡し,両者間に流れるガルバニック電流を連続測定した。試験期間を1週間とし,その間に流れたガルバニック電流から電気量を測定し,それをファラデーの法則を用いて腐食量に換算した。試験前と試験後に電子天秤を用いて試料の重量を測定し,その差からも腐食量を求めた。比較試験として,同じ試験液中にアルミニウムを単独浸漬し,その腐食量も測定した。試験終了後に試料の表面観察を行い,腐食発生状況についても調査した。また,ガルバニック腐食抑制効果をねらい,アルミニウムに陽極酸化処理を施した試料についても同様の試験を行った。 ガルバニック腐食試験の結果,単独浸漬をしたアルミニウムに比べて,CFRPと短絡したアルミニウムは腐食量が大幅に増大することが分かった。特にその傾向は7057よりも純アルミニウム1050や1100で顕著であった。単独浸漬した1050の腐食量が0.1~0.2mg/cm2であるのに対し,CFRPと短絡した1050の腐食量は最大で約20mg/cm2となり,単独浸漬時の腐食量と比較すると約二桁増加した。7075では単独浸漬,CFRPと短絡しての浸漬それぞれの腐食量は約5,25mg/cm2となり,CFRPと短絡時の腐食量は単独浸漬時に比べて約5倍となった。1050に30分以上の硫酸陽極酸化処理とイオン交換水中での封孔処理をを施すと,CFRPと短絡時に流れるガルバニック電流はほぼゼロに抑制され,試験後の試料にも孔食などの腐食は確認されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで定量的なデータがほとんど存在していなかったCFRPと金属材料とのガルバニック腐食に関して,CFRPとアルミニウムとを塩化ナトリウム中で浸漬し,両者間に流れるガルバニック電流を測定するという電気化学的測定を行うことで,定量的なデータを測定することが出来た。ガルバニック腐食の防食法開発のため,表面処理の一種である陽極酸化処理を施したアルミニウムを用いてガルバニック試験を行うことで,その防食効果についても調査を行った。
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今後の研究の推進方策 |
実機構造体として,CFRPとアルミニウムとが接触して使用されることを鑑み,CFRPとアルミニウムとを直接ボルトなどで結合した試料の腐食試験を行う。また,実機構造体には何らかの外荷重が加わることを想定し,荷重が負荷された状態でCFRPとアルミニウムとが接した際の腐食挙動を調べ,ガルバニック腐食がアルミニウム合金の機械的性質に及ぼす影響についても調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に購入予定のポテンシオガルバノスタット2台のうち,1台は既存の設備で代替することが出来たため。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度に購入予定の小型卓上試験器に,電気化学測定可能なオプションを追加するために使用する。
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