炭素繊維強化プラスチック(CFRP)とアルミニウムとが接した際に,アルミニウムの腐食が加速される「ガルバニック腐食」について,電気化学的測定手法により調査した。アルミニウム試料には,航空機外板の皮材と類似した成分を持つ純アルミニウム1050を用いた。ガルバニック腐食を定量的に評価するため,アルミニウムとCFRPとを同じ試験液中に浸漬し,両者を無抵抗電流計を介して短絡する,いわゆるガルバニック試験を実施した。この方法を用いれば,アルミニウムが腐食する際に流れる腐食電流を無抵抗電流計にてリアルタイムに計測できる。また流れた電流の時間累積からファラデーの法則を用いて,腐食量(重量減)にも換算できる。このような手法を用いて,CFRP短絡によるアルミニウム腐食加速効果について調べた。最終年度においては,ガルバニック腐食に及ぼす食塩水濃度の影響,液流速の影響について詳しく調べた。食塩水濃度は0.001~1mol/Lのあいだで7水準に変化させた。液流速については,0~16.5 cm/sのあいだで6水準で変化させた。 CFRPと短絡せずに単独で1050を食塩水に浸漬した場合は,NaCl濃度にかかわらず1050の腐食量は0.1mg/cm2と小さかった。それに対し,CFRPと短絡して1050を浸漬した場合,NaCl濃度が高くなるにつれて腐食量も大きくなった。液撹拌時においては,NaCl濃度の対数と腐食量とが比例関係になることが判明した。 液流速については,単独浸漬の場合は液流速に関係なく腐食量は0.08mg/cm2と小さいが,CFRPとの短絡浸漬の場合は,流速が増すにつれて腐食量は線形的に増大することが判明した。
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