本課題研究の目的は、新たな流体力学的推力偏向(Fluidic Thrust Vectoring: 以下略してFTV)システムを提案して製作し、制御システムと組み合わせる事で従来の航空機の運動性能を格段に高めうる事を実験室での性能試験と小型模型飛行機による野外試験飛行で実証する事である。 研究初年度(平成26年度)にはFTVシステムの基本動作原理について複数の案を提案し、数値解析と実験によってそれぞれの性能評価を行った。その結果、本研究でFTVシステムの性能要件とした、1)方向制御のための二次流を推進機の排気自体から取り出すこと、および2)FTV性能としてノズル流れの偏向角が10度以上であること、の二条件を満足するFTVシステムを見つけることが出来た。また飛行試験用の機体の選定を行った。 昨年度(平成27年度)はこのFTVシステムについての数値計算および実験による詳しい性能評価に加えて、模型飛行機による野外飛行試験を行うために最適な機体の調査及び選択をおこなうとともに、従来の舵面操作とFTVシステムを飛行中任意に切り替えるための遠隔操作システムを開発した。これにより、小型模型飛行機にFTVシステムを実際に搭載して飛行させ、姿勢制御を行える事を確認する事ができた。 今年度は噴流の偏向角をより大きく、かつ安定して制御するためのFTVノズルの最適化を行ったが、その結果として制御用二次噴流強さと主流偏向角の関係をより線形に近づけることが出来た。この事によって機体の姿勢制御が従来よりも容易に行えると期待できる。 また飛行試験データの信頼性を高める目的で、模型飛行機に自動操縦システムを搭載して、飛行経路を一定に保つ事が出来るようになった。 以上述べたように、本課題研究によりFTVシステムの開発に向けて有益な情報を数多く得る事が出来た。
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