研究課題/領域番号 |
26420812
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 明 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 客員研究員 (70110773)
|
研究分担者 |
安藤 康高 足利工業大学, 工学部, 教授 (60306107)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | プラズマ溶射 / 軽量化 / プラスチック / 表面高機能化 / 小型低電力化 / 金属コーティング / 航空宇宙工学 |
研究実績の概要 |
本年度はガストンネル型プラズマ溶射法により軽量機材であるプラスチック表面に金属膜などをプラズマ溶射し、航空宇宙部品として、さらに汎用性を高めるため、その機械的性質など機能性の向上をめざした。また、小型省電力の溶射トーチを開発し、より簡便に高機能プラスチックス複合材料を得ることを目的として研究を進めた。 ガストンネル型プラズマ溶射についていえば従来20kW の電力を必要としていたものが、10kW以下でも高品質の金属Cu膜の作製が可能となった。まず、Cu粉末を用いて、5kW(80A-50V)クラスの実験を行い、ガストンネル型プラズマ溶射により、プラスチックス基板上に50ミクロン以上のCu膜を1分以下の短時間に作製した。作製した金属膜の性能について特に酸化特性について調べた。その結果従来Cu溶射膜は酸化していないと思われていたものが、より詳しいX線回折装置(XRD)による分析により、実際にはわずかながら酸化していることが分かった。これについては、その酸化メカニズムの解析のため、本研究課題で行っている金属膜作製の溶射実験と金属膜の酸化解析を、期間を延長して次年度に行い、研究の取りまとめを行う。 さらに、ガストンネル型プラズマ溶射の小型化については、ガスダイバータノズルを8㎜としてプラズマアーク方式の1kW級の省電力プラズマ溶射装置を開発した。この場合従来の1.5倍ほどの入力熱効率を達成することができ、金属、セラミックスなどの溶射粉末を効果的に溶かすことができる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、出力3kWの小型のガストンネル型プラズマ溶射装置を用いて、融点の高いCuの粉末を用いてプラスチック樹脂表面に高性能の金属膜が作製可能になった。しかし、作製したCu膜のSEM観察とXRDによる成分分析により、若干の酸化が確認されている。この場合、メカニズムの解析に想定以上に時間を要することが判明し、さらなる実験研究の必要性を生じたため、引き続き次年度に金属膜作製の溶射実験と金属膜の酸化解析等を行う。 また、3kWの高効率のガストンネル型プラズマ溶射トーチ設計により、融点の高いアルミナ、ジルコニアなどの各種セラミックスとの混合粉末による複合機能膜の作製については、実験に若干の遅れを生じており引き続き次年度に研究を進める。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は追加実験とともに研究の取りまとめを行い、当初の計画通りの成果をあげる。 1.小型のガストンネル型プラズマ溶射装置を用いて高性能のCu金属膜作製の溶射実験と金属膜の酸化解析等を行う。XRDによる成分分析により金属膜の酸化解析を行い、酸化のメカニズムを明らかにする。 2.3kWの高効率のガストンネル型プラズマ溶射トーチにより、融点の高いアルミナなどのセラミックスとの混合粉末による複合機能膜の作製実験研究を進める。 3.以上の結果をもとに、プラスチック複合材料の軽量化、高機能化の研究の取りまとめと、研究発表、論文投稿を行うとともに宇宙航空部材への適用性を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前年度の未使用額に加え、本年度も小型のガストンネル型プラズマ溶射装置の設計・開発を主に行ったため、前年度同様、実験、および実験データが当初計画より少なく、そのためのアルバイト謝金など人件費が不要になったためである。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度は補助事業の延長期間ではあるが、引き続きプラズマ溶射実験のための実験消耗品など物品費に当てるとともに、研究打ち合わせ、研究発表などの出張旅費、および、実験結果を取りまとめて論文投稿するための経費に当てる。
|