本研究では,地面効果を利用し浮上走行を行う鉄道であるエアロトレインに関して,風洞実験により地面効果域内での揚力や抗力,モーメントをモデル化し,機体の力学モデルを用いたシミュレーションにより翼配置・翼面積・重心位置などの機体の形状パラメータが制御性・安定性に及ぼす影響を考察することにより,機体形状の設計論を構築することを目的としている. まず最終年度の研究実績としては,前年度に開発した機体の縦系の運動モデルを拡張し,地面効果の非線形性を考慮した空気力モデルを導入した3次元動力学モデルを導出した.またこれをMaplesoft社の動力学シミュレーションソフトウェア「MapleSim」を用いて実装し,シミュレーション環境の構築を行った.また,前後浮上翼の干渉特性と前後対称翼の風洞実験を行い,効率向上のための知見とモデリングのためのデータを取得した. 全期間を通じた研究成果としては,まず,空力特性のモデリングの高精度化のために風洞実験を行い,これまで得られていなかった地面効果下での補助翼の影響,前後の翼干渉の影響,負の迎角時の空力特性,前後対称翼の空力特性のデータを得た.補助翼が動いた際の空力特性の応答遅れを調べた.次に,地面効果の非線形性を考慮した空気力モデルを含むエアロトレインの縦系の動力学モデル,次いでこれを拡張し横・方向系を含む3次元の動力学モデルを構築した.またこれを用い機体重心位置や前後の浮上翼面積の配分,水平尾翼の有無を変化させて挙動を調べたところ,これまでのエアロトレインの構造ではいずれも不安定となり,これらの機体形状パラメータは安定性にほとんど影響を与えないこと,水平尾翼の装着によって安定性が大きく改善することが分かった.以上の知見は機体形状の設計に資するものである.
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