研究課題/領域番号 |
26420816
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
渡邉 力夫 東京都市大学, 工学部, 准教授 (20308026)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 極低温 / 誘電体 / 体積抵抗率 |
研究実績の概要 |
平成26年度は極低温冷凍機の導入による真空チャンバ内誘電体試料の冷却を試みた.当初導入予定であった住友重機械工業社製のGMサイクル冷凍機RDK101を予定通り導入したが,当該真空チャンバが他の実験に使用されていたことなどから,導入時期が大幅に遅れた.また,冷凍機先端の冷却部から試料台までの距離が離れたいたことから,新規に冷却スカートや冷却流路を設計したことも導入時期が遅れた理由である.真空チャンバに装備された状態で冷却機の冷却部自体の冷却試験を実施した結果,2段部で74K,1段部で19Kまで冷却されていることが確認できた.1段部で19Kまで冷却できているということは,冷却流路などを経由して試料を冷却した場合には概算で30Kまで冷却できることになるが,熱伝導ならびに熱放射による熱流入によって冷却性能が悪くなることから,今後は試料台を含めた適切な熱設計が必要になる.本年度は試料台の熱解析モデルを構築し,伝熱解析に着手した. 真空チャンバならびに電子線照射設備に関しては,引き続き使用しながらその性能を保持しているが,本年度は電子銃の故障などがあり,その修理とメンテナンスに時間を要した.電子銃から放射される電子線の電子エネルギーと電子線量(電流量)の関係に関しては,平成25年度に設計開発したファラデーカップにより定量的な計測を実施し,電流量や総電子線量を定量的に制御できるようになった.これにより,宇宙機用誘電体材料に対する電子線照射試験を常温下で実施した.パラメータとしては照射電流密度と総照射線量とし,電子線照射終了後の表面電位履歴から体積抵抗率を計算した.その結果,照射電流密度が多いほど照射終了後の過渡的な電位減衰が大きくなり,蓄積電荷がより早く拡散することがわかった.今後は極低温域での計測を進めていく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していたGMサイクル冷凍機の既設真空チャンバへの導入は達成し,冷凍機単体での冷却性能確認は終了したものの,冷凍機冷却部から試料台までの距離が長いことから新たに冷却流路を設置しなければならず,その設計開発設置に時間がかかり,試料台に設置した試料の冷却確認をすることができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度にはまず,試料台上の誘電体試料を30K程度まで冷却することを目標として試料台を含んだ冷却流路の開発を急ぐこととする.試料の冷却を確認した後は極低温域における誘電体の電子線照射試験を実施し,試料表面電位履歴から体積抵抗率を計算する.その後,平成27年度導入予定の温度調整装置一式を新たに導入し,広い温度範囲における試料温度の制御を高精度で行い,試料温度が体積抵抗率へ与える影響を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は冷凍機の導入を主眼として設備装置の導入を図った.また,前倒し金は宇宙機帯電で最も重要な国際会議が平成26年度に開催されたため,当会議における発表と情報収集に利用した.次年度使用額が生じた理由は,本年度の目的であった冷凍機導入と既設真空チャンバへの接続を果たす計装スカートの導入が完了し,その他の細かい装備品については平成27年度に検討をすると決めたからである.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は,まず試料台を含めた試料冷却手法の検討をする.このためには,温度センサや計装治具,計測器機とのインターフェイスなど,電装系の設計と試料台を含めた熱制御システムの構築が主な内容となる.このためには,平成27年度導入予定の温度調整装置やこまかい装備品が必要となるため,繰越金を使用することとなる.
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