研究課題/領域番号 |
26420818
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
小野田 淳次郎 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 名誉教授 (20013740)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 制振 / 準能動的 / エネルギ回生 / 最適化 / 圧電素子 |
研究実績の概要 |
振動の位相に応じたタイミングで、振動する構造物に取り付けた圧電素子に蓄えられた電圧の極性を、圧電素子にコイルを短時間接続することにより反転させ、効率的に制振を行うエネルギ回生型準能動的制振システムを構成する圧電素子とコイルの設計と組み合わせの最適化に向けて研究を行っている。この制振システムが定常状態で散逸するエネルギは、上記の電圧反転前後の電圧比(以降電圧反転係数と呼ぶ)に大きく依存し、この電圧反転係数は圧電素子とコイルを含む回路の等価抵抗に依存することから、昨年度は、種々の圧電素子とコイルを組み合わせた実験から、板状の圧電素子について上記等価抵抗を表現できる数学モデルを構築し、これを用いて圧電素子のインピーダンス適合と圧電素子とコイルへの質量配分についての最適化を定式化し、解を示した。 今年度はこれを以下のように発展させた。 ・上記の等価抵抗の数学モデルは、電圧反転時の電気的振動と構造の高次振動の連成が強い場合には有意な誤差を生じることが認識されていたが、現実的な構造の制振の場合にはこの連成は比較的弱く、上記モデルが広く適用できることを示した。 ・様々な最適化の具体例を示し、上記の最適化が定常状態でのエネルギ散逸率を最大化するものであるにも拘わらず、自由振動の場合にもその制振効率が本最適化により大幅に向上する例なども示した。 ・以上(昨年度成果を含む)を纏め、この分野で権威のある学術誌に投稿した。 ・一部の積層型圧電素子については、昨年度作成した等価抵抗の数学モデルでは有意な誤差が生じることが昨年度から認識されていた。今年度実施した諸試験結果から、その理由が垣間見えてきたが、その数学モデルを構築するためには本研究計画立案時には想定していなかった綿密で広範な実験を行う必要があると考えられ、現時点では構築に至っていない。本件は来年度に継続して行う計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
板状圧電素子については最終目標に到達した。 一部の積層型圧電素子の等価抵抗の挙動が、板状圧電素子のそれと異なる点については、今年度実施した様々な追加試験結果から、圧電素子の誘電率の電界強度依存性に依るところが大きいと判断するに至った。これは、一部の積層型圧電素子の層厚が薄いために、比較的低い印加電圧でも非線形性が表れた結果と考えられるが、研究計画策定時には予期していなかったことである。圧電素子の非線形性を十分な精度で論じるためには予定していなかった種々の試験を実施する必要があることから、そのモデル化や最適化には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
前項で述べたように、板状圧電素子については目標を達成したが、一部の積層型圧電素子については予想に反して非線形性が無視できず、その挙動のモデル化には未だ至っていない。そこで、最終年度である次年度には、当初計画した簡単なモデルでの最適化効果の実証実験を数値シミュレーションに変更し、非線形性を考慮した積層型圧電素子の挙動のモデル化と最適化に重心を移す計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
既に述べた通り、本年度は、一部の積層型圧電素子について昨年度作成した等価抵抗の数学モデルが十分な精度で適用できない理由を解明すべく、慎重に様々な予備実験を行ってきた。そのため、上記の理由が垣間見えるまで本格的な実験や圧電素子の購入を控えてきた。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度は、上記の理由と考えられる積層型圧電素子の非線形性の定量的把握に向けて、当初予定外の実験を行い、本研究の目的に適用できる数学モデルの構築に努める。
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