研究課題/領域番号 |
26420821
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工 |
研究代表者 |
樫谷 賢士 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, システム工学群, 教授 (80535279)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高レイノルズ数流れ / 可視化 / 後流 / シュリーレン法 / 風洞試験 / 低温風洞 / 空力特性 / 抵抗 |
研究実績の概要 |
平成26年度は,はじめに従来研究の継続より高レイノルズ数流れ場の検証を進めるためCFD解析について実験との比較検討を行った.プログラムにはオープンソースであるOpenFOAMを用いた.本研究では高亜音速流中の翼型流れにOpenFOAMを適用し,低温風洞(高レイノルズ数風洞)によるNACA 64A 010まわりの流れを検証した.マッハ数は0.277と0.596,そのときのレイノルズ数は360,000と3,800,000である.その結果のOpenFOAMの一つであるSonicFOAMにより得られた翼面圧力係数の計算結果は,実験結果と良く一致し高レイノルズ数流れの実験により得られる流れ場の比較検討に有効であることを示した.また,低温風洞(高レイノルズ数風洞)による後流測定と後流積分法による空力特性の推算にむけ測定システムの構築を行い,最初の一歩として低速風洞に本測定システムを適用し供試模型の後流測定を行った.その結果,本システムにより得られたデータを後流積分法により解析することで,従来不明であった模型幅方向の揚力分布など空力特性を明らかにすることがで,低温風洞(高レイノルズ風洞)への利用にむけて一定の知見を得た.さらに,低温風洞(高レイノルズ数風洞)は-160℃と極めて低い温度で運転されるので,測定部に設置した風洞天秤の材料収縮にともない発生する出力を明らかにするため,既存3分力天秤のゼロ点シフトの検討を行った.その結果,気流温度低下にともない,揚力は天秤と風路内の温度差に,抵抗とピッチングモーメントは天秤内の温度変化に対応するなど,気流温度により各分力のゼロ点が変化することが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.得られた実験データを検証するため実験とCFDの比較検討を行い,本研究で用いるOpenFOAMによる計算は,本低温風洞(高レイノルズ数風洞)の実験結果と良く一致する. 2.低温風洞(高レイノルズ数風洞)での後流測定にむけた測定システムの構築とデータ解析プログラムの改良により,トラバース装置を連続的に移動しデータを取得できるシステムを構築した.また,同システムを低速風洞に適用し,従来のシステムより実験時間の短縮を可能とした. 3.供試模型として設計製作されたBWB(Blended-Wing-Body)について,後流測定により模型幅方向の揚力,抵抗の分布や,誘導抵抗と形状抵抗を個別に求めることを可能とした.このとき,BWBは胴体中央部でも揚力を発生していること,また,本実験では迎え角8°と10°で誘導抵抗に2つのピークが存在することが明らかになった. 4.後流測定による測定間隔の影響について,本実験では測定間隔5 mmと20 mmで揚力係数への大きな違いはなく天秤による測定結果と良く一致した. 5.低温風洞(高レイノルズ数風洞)用の風洞天秤について低温でのゼロ点シフトを検討し,気流温度低下にともない,揚力は天秤と風路内の温度差に,抵抗とピッチングモーメントは天秤内の温度変化に対応するなど,気流温度により各分力のゼロ点が変化することを明らかにした. 以上のように,高レイノルズ風洞における後流測定を可能とするシステムの構築を進めた.一方,フォーカシングシュリーレン法による低温風洞(高レイノルズ数風洞)の可視化については,焦点深度を10 mm前後となるように設計を行った.
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今後の研究の推進方策 |
1.平成26年度に開発した後流測定装置を低温風洞(高レイノルズ数風洞)に設置し,低温風洞で後流測定を行う.風洞模型には既存の標準模型の一つであるAGARD-Bを用い,先行研究で実施された空力データとの比較など低温風洞の後流測定システムの検討により測定技術を確立する. 2.後流積分法による空力推算法の精度向上にむけたさらなる検討として,測定間隔や後流を測定する多孔ピトー管のトラバース速度と得られる空気力の関係など詳細について検証を行う. 3.低温風洞(高レイノルズ数風洞)用の供試模型製作について,過去に得られた製作技術と合わせて,低温での模型材料の残留応力の影響など,問題点の検討を進め模型製作技術を向上させる. 4.風洞測定部の一部改良を行い,フォーカシングシュリーレン法によるAGARD-B模型をはじめとした模型まわりの高亜音速から遷音速までの実験行う.実験でははじめに光学系の可視化特性の検証を行う.合わせて画像解析による流れ場解析法の検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,研究目的のうち後流測定の実験が比較的良好に進んだ.このため,研究の割合を後流測定を中心に進めたので,フォーカシングシュリーレン法による可視化実験の準備の割合が若干小さくなり,当初購入を予定していた関連物品購の費用が次年度使用差額として生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
フォーカシングシュリーレン装置の設計及び購入部品の選定はほぼ完了しており,次年度以降に関連物品を購入し研究を推進する予定である.
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