研究課題/領域番号 |
26420823
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
千賀 英敬 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60432522)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 渦励振 / 長大弾性管 / 3次元離散渦法 / PIV |
研究実績の概要 |
平成27年度は、まず3次元離散渦法の流体力推定精度の検証を行った。小型回流水槽内で水平方向にバネ支持した剛体円柱の模型に一様流を与えた。模型周りの流場を2次元のPIV(Particle Image Velocimetry)システムで可視化し、模型の運動も計測した。また、検力計で模型に働く流体力を計測した。この実験においては、単純な円柱模型だけでなく、渦励振を抑えるための付加物を取り付けた模型での実験も実施した。これは、本研究で開発する長大弾性管の3次元挙動推定法を用い、渦励振を軽減するための付加物を長大弾性管のどの位置に取り付けることで、効率的に渦励振を軽減できるかを検討するためのデータである。これらのデータや、球周りの流れの可視化実験等の他研究者の既存の実験データとの比較を行い、3次元離散渦法の精度検証を行った。 次に、3次元ベクトル方程式を有限差分法で解く長大弾性管の3次元挙動推定法と3次元離散渦法を連成させ、3次元挙動推定法の基礎を構築した。この流体-構造連成解析による推定法では、アルゴリズムが簡単で計算効率の高い、弱連成を用いた。3次元離散渦法により得られた流体力を有限差分法の荷重条件とし、また有限差分法により得られた変位、速度、加速度を3次元離散渦法における境界条件として流れ場と構造応答を解析している。その結果を2016年3月に開催されたViolent Flows 2016にて発表した。上記の計算は、前年度に本研究費で購入したGPU計算環境下で実施している。並列計算を行っているため、通常のPCよりも計算時間は短くなっている。しかしながら、流場内に導入された離散渦の個数の増大による計算負荷を軽減させる手法を、今後導入する必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画のとおり、小型の検力計を購入して回流水槽での模型実験を実施することで、3次元離散渦法の流体力推定精度の検証を行えた。またこの実験においては、追加で渦励振を抑えるための付加物を取り付けた模型での実験も実施した。これは本研究で開発する長大弾性管の3次元挙動推定法を用い、渦励振を軽減するための付加物を長大弾性管のどの位置に取り付けることで、効率的に渦励振を軽減できるかを検討するためのデータとして使用する。 前年度に開発を行った3次元離散渦法と、3次元ベクトル方程式を用いた長大弾性管の3次元挙動推定法を連成させ、長大弾性管の3次元挙動推定法の基礎を構築することができた。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
流体‐構造を弱連成させた長大弾性管の3次元挙動推定法の精度検証を行う。 また、GPUを用いた計算のみでなく、ツリー法などを用いることで流場に導入された離散渦要素数の増加に伴う計算不可の軽減をはかる。 今年度の追加実験により、付加物が取り付けられた管の渦励振のデータを得ることができた。本研究で渦法を用いた理由の一つに、解析対象の形状を容易に変更できることがある。付加物を取り付けた管をモデル化し、前述のデータと比較・検証を行う。これにより、上記の計算手法を用いて長大弾性管のどの位置に・どれぐらいの範囲で付加物を取り付ければ管全体の挙動を抑えることが可能かを推定できるようになると考えられる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は主として実験を行う計画であり、円柱模型を製作する必要があった。この模型の製作には、大阪大学 創造工学センターが所有する3Dプリンタを用いた。模型の3Dデータを持ち込む場合、製作費用は模型の材料費(PLAフィラメント)のみで良く、研究計画よりも安価で模型を製作することができたため。 当該年度に参加した国際学会(Violent Flows 2016)は大阪市内での開催であり、宿泊せずに各日日帰りとしたため、学会参加にかかる費用を抑えたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
長大弾性管を用いて実際に掘削を行っている地球深部探査船「ちきゅう」を運行する海洋研究開発機構の関係者を訪ね、実運用について情報交換・収集を行うための旅費とする。 次年度も回流水槽での実験の実施を予定しており、同じく大阪大学 創造工学センターにて模型を製作する費用とする。
|