前年度までの研究成果により、流体-構造を連成させた長大弾性管の3次元挙動推定法は確立した。しかしながら、計算時間の進行とともに流場内に導入された離散渦数が増加し、それに伴う計算負荷を軽減する必要があったため、平成28年度はまず計算負荷の低減を図った。解析対象から遠方にある離散渦が解析対象に誘起する速度は小さいことを考慮し、それらの渦要素を同じ渦度を持つ1つの渦要素に置き換えた。また代表的な計算負荷の低減手法であるツリー法を用いることにより、計算負荷を低減した。GPUによる並列計算については、まだ改善の余地がある。 次に、確立した流体-構造を連成させた3次元挙動推定法を用い、長大弾性管の渦励振推定精度を検証した。これには過去に実施した6.5mの弾性管模型の強制動揺実験結果を用いた。数値計算による運動推定結果と実験結果が概ね一致したため、本手法を用いて付加物による渦励振の軽減が、弾性管全体の挙動にどのような影響を与えるかの検証を行うことを考えた。 まずは付加物による渦励振の軽減性能を検証するための実験を行った。実機において、渦励振軽減のための付加物が取り付けられるのは、管に潮流が影響を与える海洋の上層付近のみである。したがって、まずは付加物が取り付けられている管の部分のみのを対象とした実験を行った。数値計算手法では渦法を使用しており、流場に格子を生成する必要が無く、解析対象の形状を比較的容易に変更できる利点がある。種々の付加物形状を考案し、大阪大学創造工学センター所有の3Dプリンタにて模型を製作した。作成した模型を小型回流水槽にて、1)模型両端固定条件下で流体力の計測、2)模型両端バネ支持条件下での運動・流場計測、3)塗膜法による流れの剥離位置の計測を行った。これにより渦励振軽減のための付加物に関するデータを取得できたが、数値計算との比較がまだ十分ではなく、今後継続して実施する。
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