本研究では、船長200m程度の大型船を対象に、画像処理技術を着離桟操船支援へ適用し、船体近傍の俯瞰画像と離隔距離や着桟速力などの数値情報を提供することの、安全性向上や操船者負担軽減への効果を明らかにすることを目的に、システムを構築し、造船所においてドック進水後に艤装岸壁へ着桟する実船に搭載して試験を実施した。 昨年度開発した複数カメラ画像の合成と、姿勢変化の補正法を実船試験に適用し、着桟側の片舷全体を3台のカメラを使用して俯瞰表示すると同時に反対舷側も前方1/3程度を1台のカメラで撮影して俯瞰表示することによって、岸壁との位置関係や曳船の状態を同時に確認できる、死角のない船体周辺映像の有用性を示した。 また、姿勢変化に伴う画像のひずみ補正については、ドックにおいて建造時の姿勢と進水して浮上後の船首と船尾の喫水を入力して補正したのちの俯瞰図を比較することで、補正できていることを確認した。 さらに、離隔距離や着桟速力等の数値情報の算出も、岸壁の検出に画像マッチング法によって求めた船体運動を考慮した動的な検出領域の設定や、メディアンフィルターを適用したところ、数値情報の誤差やノイズを減らすことができた。 これらのシステムを開発することにより、船体周辺の状況や岸壁との位置関係、離隔距離、着桟速力、反対舷の曳船の状態等を一つの画面の中に集約して表示できるようになった。残念ながら、研究期間内に船長や水先案内人等の意見を聞くことはできなかったが、操船者負担を軽減させることができると思われるので、今後、実用化を目指したい。
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