昨年度に引き続き、縮小模型を使用した水槽実験を実施した.試験用模型は前年度に製作に取り組んだ1/100の縮尺で製作したディフューザ付き風車を搭載した変形スパー型の浮体風車である。 前年度にすでに作動試験を行っていた風車部と浮体部の結合と併せて、加速度やジャイロなどのセンサ類、小型サーボモータや発電機として使用するブラシレスモータ、それらを制御するマイクロプロセッサなどの組み込みと配線を実施し作動テストを行った後、水槽試験を実施した。 水槽試験では送風台車を造波装置と同じ側に取り付け、水槽内に係留索を所定の深度から立ち上げるための仮底構造体を設置して風波併存環境下での試験を実施した。全国共同利用設備である九州大学応用力学研究所の深海機器力学実験水槽の使用可能スケジュールの都合により実験は比較的短期間の実施を余儀なくされ、2回に分けて実施されることとなった。第一回目の試験では風車の起動のためのピッチ制御以外は行わず、ほぼパッシブな状態での試験を行った。この状態でも浮体は安定して風に正対することが確認され、前年度のシミュレーションで示された複合係留方式のパッシブヨー機能が作動することについて確認がなされた。第二回目の実験ではセンサ情報に基づいた風車ブレードピッチの駆動によるアクティブ制御を作動させての風波併存環境下での試験を行った。しかしながら制御パラメータなどの調整に十分な実験期間を取れなかったことから、運動振幅の低減に一定の効果は見られたものの劇的な改善とまでは至らなかった。 予定では実験結果を主にして取り扱った複合係留手法のシミュレーション結果とも併せて日本船舶海洋工学会などで公表する予定であったが、水槽試験に使用する施設のスケジュールの都合上、十分な実験期間が取れず、当初予定していた水準の信頼性のあるデータ取得には至らなかったため、現時点では公表には至らなかった。
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