近年、産業界へ導入が進む労働安全衛生マネジメントシステムOHSAS18001では、「事業者は労働安全の実績を定期的にモニタリングおよび測定するための手順を確立し維持すること」を求めている。一方、造船所の労働安全管理の現状は、労働災害のハザード(潜在危険)の同定やそのリスクの評価は、管理者の経験や言葉によるあいまいな分析が多い。本研究では、作業安全に関わるハザードのリスクを定量的にモニタリングすることを目的に、作業する作業者の動画像の画像処理による造船工場の作業・安全状況の定量的な評価と、画像処理に有効な動画像の撮影方法に関する検討を行う。 はじめに、動画像の画像処理による作業者の位置取得手法の検討を行った。対象面積が広い造船工場への適用を考慮して、2台ではなく、1台のカメラによる位置推定を検討した。3次元空間から2次元の画像平面上への射影モデルとして、カメラを通して画像平面に射影する様子を行列で表す写像として扱い、位置を推定する。画像処理によって作業者の位置情報を取得するためのプログラムを開発し、屋内のモックアップ、実際の造船工場の建屋内で撮影実験を行い、手法の有効性を検討した。さらに、屋外のブロック組立工程で撮影実験を行い、準備、主作業、片付までの一連の作業工程において、作業者だけでなく機械の位置も取得し、作業情報と合わせて作業状況の定量的な評価の検討を行った。 画像からの作業情報の取得では、これまでは、作業者に装着した小型カメラの作業画像を目視で作業観測を行っていた。観測データを効率的に入力するツールの開発も進めて来たが、膨大な画像情報の目視による分析は、膨大な分析時間、負担が課題である。今年度は、小型カメラ画像にディープ・ラーニング(深層学習)を適用した作業情報の抽出法の検討を行った。教示に必要な画像データの作成方法について検討し、手法の有効性を確認した。
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