実海域での運航を考慮した船体疲労強度設計法を検討するために,昨年度までは「船体疲労強度のための設計海象」という考え方を導入することを念頭に置き,疲労強度に有意であると考えられる短期海象を抽出する作業を行って,比較的高い応力範囲の応力に対して重要となる短期海象を設計海象の候補として絞り込むことができた。これより,どのような海象を航行すれば疲労強度にとって有利であるかをある程度推定することができるようになった。そこで,今年度は,実際の船舶が航行する航路を対象として,航路の違いが疲労強度にどのように影響するかをシミュレーションによって求め,昨年度までに求められた設計海象と対応付けることによって,船体疲労強度設計のための設計海象・設計荷重についての検討を行った。 シミュレーションでは,6000TEUコンテナ船を供試船として,まず,北太平洋航路と北大西洋航路において,大圏航路と最短時間航路の2種類の航路を求め,それぞれの航路における10年間分の遭遇海象を入力データとした。なお,最短時間航路は,ウェザールーティングで最適解を得る方法の一つである等時間曲線法を用いた計算により求めた。次に,これらの海象データを用いて,非線形船体応答シミュレーションプログラムであるTSLAMにより,それぞれの海象中での縦曲げ応力の時刻歴を算出した。さらに,この応力の時系列をレインフロー法により応力範囲とその発現頻度を算出し,大圏航路と最短時間航路の疲労被害度を求めた。また,一方,嵐モデルを用いた応力振幅推定法による応力推定を行い,これらの結果を比較することにより,ウェザールーティングの疲労強度への影響を議論し,船体疲労強度設計のための設計海象・設計荷重に関する考察を行った。
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