研究課題/領域番号 |
26420830
|
研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
金野 祥久 工学院大学, 工学部, 准教授 (60322070)
|
研究分担者 |
北澤 大輔 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (30345128)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 極地工学 / 氷海船舶 / 北極航路 |
研究実績の概要 |
本研究は、船舶または海洋構造物と多数の氷片とが干渉(衝突、摩擦等)する状況で氷片群が構造物に及ぼす荷重(氷荷重)を推定し、氷海構造物の性能と安全性、必要推進力等を評価する手段を提供することを最終的な目的とし、自由表面に浮遊する氷片群中の個々の氷片に作用する流体力を定量的に把握し、数値解析に利用できる流体力モデルを構築することを本研究の具体的な目標とする。平成27年度は26年度に引き続き水槽実験装置を改造した。また浮遊する物体に作用する流体力の数値解析を実施するとともに、船舶との衝突時の氷荷重を評価する手法を検討した。 浮遊物体に作用する力を計測するため新たに三分力検出器を導入した。これと既設の小型造波曳航水槽を組み合わせ、船舶が航行する際に浮遊物体に作用する流体力を計測するための手法を検討した。ただし27年度中には計測の実施に至らなかった。 数値シミュレーションによる単独氷片に船舶が接近する際に作用する流体力および氷片運動の解析を継続した。27年度は特に実船スケールでの解析を実施した。パナマックススケールの船舶と、船舶レーダーで発見しにくい直径15~20 mの氷山片を想定し、衝突直前の氷片の運動を調査した。また浮遊する物体と船舶との衝突時に作用する氷荷重の解析手法を文献調査により見出し、これと上記の数値解析結果と運動量理論に基づくエネルギー消費量の推算とを組み合わせ、氷片と船体との衝突荷重の解析手法を提案した。手法の妥当性の検討は十分とは言えず、28年度の課題である。 本研究成果の一部を複数の国際学会にて講演した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は模擬氷を用いた水槽実験および少数氷片での数値解析を実施予定であった。水槽実験に関しては、実験装置の改造を実施し計測方法を検討したものの、本実験の実施には至っていないため、この点では計画よりも遅れている。 一方、少数氷片での数値解析は実船スケールのレイノルズ数・フルード数での解析を実施でき、氷片に作用する流体力およびそれに起因する運動を評価することができた。また当初予定にはなかったことだが、上記解析結果と運動量理論とを組み合わせることにより衝突時のエネルギー消費を評価し、エネルギー消費から氷荷重を推定する手法と組み合わせることにより、衝突時に船体に作用する氷荷重を推定する手法を提案した。この点ではおおむね順調に進行している。 以上を総合し、研究は当初計画と比べるとやや遅れていると判断した。ただし副次的な研究成果を得ている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度から着手している水槽実験を実施する。特に氷片に作用する流体力を計測することを目標とする。 この結果と数値解析結果に基づき、氷片に作用する流体力のモデル化、定式化を行う。氷片群の密接度、氷片と船体との位置関係、および氷片の移動速度等をパラメータとする関数になることを想定している。 最終的には、上記の流体力モデルを研究代表者が所有するシミュレータに組み込み、実験結果を用いてモデルの妥当性や精度を検証する。必要に応じてモデルを改良する。なお氷片に作用する流体力は計測していないものの、氷片運動を計測した実験に関する文献が出版されたので、この文献データを妥当性評価に用いる。また研究代表者はノルウェーでの海外研修を予定しているので、この期間中にノルウェーの研究グループが実施した実船実験データに接し、妥当性評価に用いる。 研究分担者(北澤)との連携を密にするため、28年度から研究代表者(金野)は研究分担者とオンラインミーティングを定期的に実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物体の衝突を伴う流れ場の数値解析のため、汎用数値流体解析ソフトウェアSTAR-CCM+ V8を導入予定だった。しかし工学院大学情報科学教育研究センターが提供するSTAR-CCM+ V7で衝突直前までの解析をすることで本研究に必要な解析が実施できたため、導入を見送った。水槽実験準備のため消耗品を多々購入したため、残高が圧縮された。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度中に実施できなかった水槽実験の準備、特に浮遊物体に作用する流体力の計測装置および模擬氷の導入のために当該助成金を使用する予定である。
|