本研究では,洋上や沿岸域の重要施設等付近を接近航行する船舶を監視するためのシステム開発の一環として,水中音を利用して接近船舶等を検知・識別する手法の開発を行う。そこで船舶の水中音観測および音波伝搬モデルの構築に関する技術開発を行うことを目的に,航行船舶の水中音特性の検出手法(自動化)や算出した結果の最適な識別手法の構築(パターン認識など)により,接近船舶が既知船か未知船かを明らかにすることを目指す。さらに時間領域有限差分法などシミュレーションに用いられる音波伝搬モデルの導入により,実海域観測実験と本モデルとの比較・検証を行う。これにより,接近航行船舶の音源が推定でき,水中音特性から船舶の識別が可能になると考えられる。 平成28年度は,船舶の水中音観測に関する情報収集を引き続き行うとともに,これまでに購入したハイドロホンを用いて,前年度と同様に航行船舶の水中音観測実験を行った。実験を行うにあたって,共同研究先である国立弓削商船高等専門学校と,弓削島周辺海域における観測場所(海域)の選定について再検討し,実験計画を見直した上,計測方法や収集データ項目などについて意見交換も行った。水中音観測実験後,取得した計測データ等については,整理をした上で解析を進めることとした。 そこで接近船舶を早期検知する手法として,FFTならびに線形予測法によるスペクトル解析を導入し,その結果,特徴のある周波数特性の早期検出を容易にすることができた。また同一船舶の速力違いによる水中音特性を捉えておく必要があると考え,観測対象船の速力違いにおける水中音特性の変化を捉え,検討評価を行った。併せて,引き続き時間領域有限差分法(FDTD法)を用いたアルゴリズムの開発も進め,導入の検討を行った。 さらに,最終的には安全のための海上監視システムの確立を目的としているため,海上監視システムに関する情報収集も行った。
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