研究課題/領域番号 |
26420841
|
研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
坂上 寛敏 北見工業大学, 工学部, 助教 (70271757)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 人工ガスハイドレート / 同位体分別 / 炭素安定同位体比 / 水素安定同位体比 / 比表面積 / ガス交換 |
研究実績の概要 |
天然に存在するガスハイドレートの産状と起源を解明する上で,ガスハイドレートに包接されている炭化水素ガスの組成・同位体比分析は重要な情報を提供する。ガスハイドレートの結晶成長は相変化であり,安定同位体分別の存在が予想される。しかし,炭化水素を含むガスハイドレートの生成に伴うゲスト分子の安定同位体分別に関する研究報告例は極めて少ない。本研究は,種々の温度および圧力条件において人工ガスハイドレート生成を行い,相変化が包接炭化水素と気相炭化水素の同位体組成に及ぼす影響を定量的に調べることに重点を置いている。 本年度も引き続き,単一成分でメタンあるいはエタンを用いた系について,下記の項目について実験を行いデータの蓄積を行った。 ・ゲストガス安定同位体分別の温度・圧力依存性の解明について,種々条件において人工的にガスハイドレート生成を行い,ゲストガス安定同位体分別の温度依存性,および圧力依存性について検討を行った。先行研究の結果と同様に,メタンおよびエタンについて炭素の同位体分別は認められなかったが,水素の同位体分別は認められた。 ・ガス相とハイドレート相の間のガス交換速度の測定について,人工的にガスハイドレートを生成し,ガス相を別の安定同位体比のものにそっくり入れ替えることにより,ゲストガス交換過程の時間変化について検討した。その結果,比較的短期間でガス相とハイドレート相の間のメタンが交換していることが明らかとなった。また,交換時間と共に交換速度が変化している傾向が見られた。エタンについては,ハイドレート生成後のガス置換が困難であり測定に至らなかった。 ・氷/ガスハイドレート多孔質体の比表面積測定技術の開発について,連携研究者の八久保晶弘氏(北見工業大学工学部)の協力により,ガス吸着法による比表面積測定技術をガスハイドレート多孔質体に応用し,その比表面積測定を行いデータの蓄積を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までに実施した研究により,炭化水素のうちメタンおよびエタンを含む人工ガスハイドレートの生成に伴うゲスト分子の安定同位体分別に関するさらなるデータの蓄積ができた。また,メタンを用いて生成した人工ガスハイドレートのガス相を異なる安定同位体比のガスに置き換え,ゲストガスの同位体組成に及ぼす影響に関するさらなるデータの蓄積ができた。次年度以降の研究により,ゲスト炭化水素ガスの水素および炭素同位体分別の詳細を明らかにすることができると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策については,引き続き前年度の研究計画を継続しつつ,エタンやプロパンなどメタン以外の系についてもさらに検討を行う予定である。また,可能であれば天然のガスハイドレート試料を用いた実験にも着手する。 ・ゲストガス安定同位体分別の温度・圧力依存性の解明について,今後はメタン・エタンだけではなく,プロパンなど他のゲスト分子についても同様の実験を行い,ゲストガス安定同位体分別を調べる。さらに単一成分に加えて,メタン-エタン混合系,メタン-プロパン混合系など2成分以上のメタン-炭化水素混合系について検討を行う予定である。 ・ガス相とハイドレート相の間のガス交換速度の測定として,今後は計画を変更しメタンを用いた系について,ガス交換速度に及ぼすガスハイドレート比表面積の影響についての検討を行う予定である。 ・天然ガスハイドレートのゲストガス交換実験について,研究代表者の研究グループでは,2001年よりロシアと韓国の各研究機関との国際共同研究体制を維持し,オホーツク海サハリン島沖およびロシア・バイカル湖にて天然ガスハイドレート調査を継続している。これらの地域では,水底下僅か数m深の堆積物中にガスハイドレートを産し(表層型ガスハイドレート),重力コアラーを用いた天然ガスハイドレート含有堆積物の採取が容易である。サンプルは液体窒素温度で日本に空輸され,結晶解析が行なわれている。現在も液体窒素温度で保存されている貴重な天然結晶を用いた実験的研究に着手する。天然結晶を耐圧容器に封入し,安定同位体比の分かっているメタンガスで加圧後,水底を模した温度圧力環境(+1℃・10MPa程度)におき,既に測定済みである天然結晶中のゲストガス同位体比からどの程度変化するかを調べる。
|