天然に存在するガスハイドレートの産状と起源を解明する上で,ガスハイドレートに包接されている炭化水素ガスの組成・同位体比分析は重要な情報を提供する。ガスハイドレートの結晶成長は相変化であり,安定同位体分別の存在が予想される。しかしながら,炭化水素を含むガスハイドレートの生成に伴うゲスト分子の安定同位体分別に関する研究報告例は極めて少ない。本研究は,種々の温度および圧力条件において人工ガスハイドレート生成を行い,相変化が包接炭化水素と気相炭化水素の同位体組成に及ぼす影響を定量的に調べることに重点を置いている。 本年度も引き続き,単一成分でメタンを用いた系について,下記の項目について実験を行いデータの蓄積を行った。 ・ゲストガス安定同位体分別の温度・圧力依存性の解明について,種々条件において人工的にガスハイドレート生成を行い,ゲストガス安定同位体分別の温度依存性,および圧力依存性について検討を行った。先行研究の結果と同様に,メタンについて炭素の同位体分別は認められなかったが,水素の同位体分別は認められた。 ・ガス相とハイドレート相の間のガス交換速度の測定について,人工的にガスハイドレートを生成し,ガス相を別の安定同位体比のものにそっくり入れ替えることにより,ゲストガス交換過程の時間変化について検討した。その結果,比較的短期間でガス相とハイドレート相の間のメタンが交換していることが明らかとなった。また,交換時間と共に交換速度が変化している傾向が見られた。 ・氷/ガスハイドレート多孔質体の比表面積測定技術の開発について,連携研究者の八久保晶弘氏(北見工業大学工学部)の協力により,ガス吸着法による比表面積測定技術をガスハイドレート多孔質体に応用し,その比表面積測定を行いデータの蓄積を行った。
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