前年度に引き続き,海洋調査で採取する「分解水を含むメタンハイドレート試料」から「未分解のメタンハイドレート」を回収するためのステンレス製の高圧容器を用い,メタンハイドレートの分解実験を遂行した.前年度末に明らかとなった「圧力容器へ導入するガスによる加熱(加圧時)のため試料が過剰に溶解するという課題」の対応をすすめたところ,容器にセットした試料が全て融解してしまうことがあった.貴重な天然のメタンハイドレート試料から確実に未分解のメタンハイドレートを採取するため,今年度は高圧容器を用いた分取法の実験手順の最適化をすすめた.高圧容器下部を氷水にて冷却後,液体窒素で冷却した「分解水を含むメタンハイドレート試料」を入れ,容器を密閉し,窒素ガスを導入することで0℃,数十気圧となるように調整した.窒素ガスの導入時にメタンハイドレート試料が昇華するという問題もあったが,窒素ガスのフロー量の調整とメタンハイドレート試料サイズを選択することで,未分解のメタンハイドレートを残すことが可能となった.また,実験に用いるメタンハイドレート試料に含まれる未分解のメタンハイドレートの割合も,分取がうまくできるかという結果に影響することがわかってきた.今後の分析をすすめていく際には,未分解のメタンハイドレートを多く含む採取試料を選別し,その試料を用いて分解実験をすすめ,分析対象となるメタンハイドレートを得ることが必要であることが明らかとなった.
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