研究課題/領域番号 |
26420849
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊藤 悟 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60422078)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 超伝導材料・素子 / プラズマ・核融合 |
研究実績の概要 |
革新的核融合炉用超伝導マグネットの設計案として機械的接合法を利用した分割型高温超伝導マグネットが提案されている。本研究では、接合抵抗発生メカニズムの温度・磁場・応力依存性を定量化して最適機械接触界面構造を明らかにし、ミクロな接触界面物理とマクロな構造特性を踏まえてマグネット接合部の施工・運転・着脱までを想定した最適荷重シナリオを構築することを目的とする。 1) 最適機械接触界面構造の検討: 線材構造の異なる2つのREBCO線材の機械的ラップジョイントの接合抵抗の温度・磁場(強度・方向)依存性を評価し、電流ベクトル・磁場ベクトルの向きを考慮した接触抵抗のモデル式(約20%の誤差で接触抵抗を予測可能)を提案した。また、接合部製作時に熱処理(温度制御)を行うことによって接合抵抗を安定的に下げる手法を昨年度提案したが、本年度は熱処理温度・時間、熱処理中荷重制御の最適化を行い、より複雑な接合体系においても接合抵抗を安定的に下げられることを示した。 2) 最適接合荷重履歴シナリオの検討: 液体窒素浸漬冷却体系にてインジウムを接合面に挿入したREBCO線材の機械的ラップジョイントの引張試験を実施し、接合面の接触導電率と接合部のせん断強度の関係を調査した。接触導電率(真実接触面積)がある値になるまでは、接触面のすべり破壊によって、また接触導電率がある値より大きくなると、接合面に挿入したインジウムのせん断破壊によって、接合部のせん断強度が決まることを示した。この破壊挙動には温度依存性があり、常温で同様の試験を実施した場合には、より低いせん断強度を示すこともわかった。常温での接合部のせん断強度とREBCO線材の引張応力(引張ひずみ)-臨界電流特性を比較することで、REBCO線材の臨界電流を低下させずに接合部を解体する条件を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書では、1) 最適機械接触界面構造の検討:「温度・磁場強度・磁場方向と接触抵抗の関係の評価」、「接触材料の種類・接合時の温度の検討」、を統合しして実施する。2) 最適接合荷重履歴シナリオの検討「引張試験の継続実施による接合条件と接触面摩擦の関係の評価」、「接合部解体時にREBCO線材の損傷を引き起こさない条件の検討」を2年目の研究実施計画として挙げていた。本年度の実績はこれらの内容にほぼ沿ったものであり、おおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
3年目(最終年度)となる平成28年度は以下の内容を目的に研究を進める予定である。 1) 最適機械接触界面構造の検討: 接合部製作時に熱処理を行った接合サンプルに対して、接合抵抗・接触抵抗の温度・磁場強度・磁場方向依存性の評価を行い、本手法における接合抵抗低減メカニズムの解明に取り組む。また、本手法を大型導体接合部製作にも適用し、大型導体接合部に対する接合部低減効果を評価する。 2) 最適接合荷重履歴シナリオの検討: 接合サンプルの各種機械試験により、接合部破壊特性のデータベース構築を進める。また、大型導体の接合サンプルを製作し、液体ヘリウム浸漬冷却体系(4.2 K)において引張試験(カールスルーエ工科大学の施設を借用する予定)を行い、これまで構築してきた破壊挙動の説明と一致するかどうかを確かめる。さらに常温~150℃におけるREBCO線材の応力(ひずみ)-臨界電流特性の評価、接合部破壊挙動の調査を引き続き実施し、接合部解体方法の最適化を図る。最終的には、冷却・通電・昇温の過程での熱ひずみ・電磁力による影響をコイルの構造解析や簡易計算によって検討し、一連の施工・運転・解体の流れの中で最適な接合荷重履歴シナリオの提案を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に当該研究で開発している高温超伝導導体の機械的接合サンプルの機械試験を国際共同研究でカールスルーエ工科大学の施設を用いて行うことになった。旅費・接合サンプル製作費が平成28年度に必要であるため、平成27年度は使用額を抑え、平成28年度に使用額が増やせるようにした。
|
次年度使用額の使用計画 |
先述の理由に書いた通り、平成28年度はカールスルーエ工科大学での機械試験用の接合サンプル製作費および旅費が必要であるため、繰り越した助成金をこれにあてる予定である。
|