研究課題/領域番号 |
26420850
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
畠山 賢彦 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 准教授 (30375109)
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研究分担者 |
徐 ぎゅう 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (90273531)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 転位 / 格子欠陥 / 偏析 / 3DAP |
研究実績の概要 |
前年度作製した、3次元アトムプローブ(3DAP)測定用針状試料を固定する一軸可動の3DAP試料専用TEMホルダーにて転位と溶質原子の化学組成分析をAl-Mg合金試料で実施した。一軸(X軸)可動の専用TEMホルダーでは、電解研磨法により簡便に試料作製が出来る一方、Y軸傾斜については、試料を脱着して±2度程度の傾斜を銅パイプの変形で行うため、電子線入射方向の精密な調整が困難であることから、本年度は、新たに一般的なΦ3mmのホルダー内に針状試料とその土台となる半円状の金属片を一体化した試料形状に変更し、観察を行った。それにより、通常の試料観察と同程度の傾斜角を一般的な全てのTEMにおいて得ることが可能になった。 Al-1.0wt.%Mg合金について、先ず、刃状転位の照射を実施し、その後STEM-EDSによる分析を行ったが、転位への有意な偏析は見いだせなかった。その原因として、転位の構造解析が出来る領域が、針の太さが100 nm前後の領域となるが、EDS分析を行う場合、その試料厚さであると母相の固溶Mgの影響が大きく、バックグラウンドが上昇するためであることや、本研究の実験系で捉えるには、Mgの刃状転位への偏析量が少なかったことが考えられる。現在、針の幅をTEM観察にも適しており、かつ3DAP観察に耐えるよう、50nm~100nmの幅の領域を大きくするため、上記2軸傾斜用試料の針先形状最適化のための集束イオンビームによる加工の最適化も併せて実施し、実験条件の最適化を進めている。 観察方法以外に、用いる試料の時効条件の最適化と、観察対象の合金系をCu-Si系、PNC316など他の合金にも広げることで、TEMによる転位への偏析元素の化学分析と3DAPによる3次元的な溶質分布の観察を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種の合金試料について、3次元アトムプローブによる予備測定を行い、3次元元素マッピング上で十分な可視化が行えるかを確認し、その結果を基に電子線照射条件の検討や、照射前の試料の熱処理条件の最適化を行った。
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今後の研究の推進方策 |
未照射試料の作製については、概ね計画通り準備が進んでおり、電解研磨と必要に応じて集束イオンビーム装置による針状試料の先端形状の最適化を行った後、3次元アトムプローブ観察を進める。転位近傍の溶質原子分布取得は一部のfcc合金で取得されつつあり、今後は、測定データの充実と、bcc,hcpの測定を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関変更により、利用可能な設備が変化したため、それに対応した予算配分を行った。熱処理については、低温のものから実験を進めており、本研究費で整備する計画である高温用の炉の導入を次年度に変更したため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
熱処理用の高温仕様の電気炉を購入する予定である。 3次元アトムプローブや超高圧電子顕微鏡を共同利用で使用する予定であるが、所属機関変更によるの立地の影響により、実施場所までの旅費が当初予定より高額になることから、それらの旅費が増額すると見込まれる。
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