研究課題/領域番号 |
26420857
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
時谷 政行 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (30455208)
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研究分担者 |
宮本 光貴 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (80379693)
笠原 寛史 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (50435517)
吉村 泰夫 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (90300730)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プラズマ・壁相互作用 / プラズマ・核融合 |
研究実績の概要 |
核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)において,可動式試料駆動装置を用いて安定したヘリウムプラズマの長時間放電に試料(SUS316L, Si)を曝露した.LHDの対向材料は95%がSUS316L,5%が炭素で構成されている.放電は,高周波加熱の専門家である2名の研究分担者の協力によって,イオンサイクロトロン共鳴加熱(ICRF),電子サイクロトロン共鳴加熱(ECH)を用いて加熱入力パワー約1.2MW,電子密度1E19m-3のプラズマを最も長い場合で約48分間にわたって生成・維持することに成功した. 曝露した試料を用いて,集束イオンビーム加工観察装置(FIB)により,イオンビーム加工を実施し,試料表面に形成された表面変質層から透過型電子顕微鏡(TEM)で観察可能な微細構造解析用のナノ断片薄膜を切りだした.FIBで作成したナノ断片薄膜試料に対して,TEMを用いた微細構造解析を実施した.その結果,試料表面には,(1)ヘリウム照射によるヘリウムバブルや転位ループなどの照射損傷の形成,(2)Mixed-material堆積層の形成が確認された.(1)はSUS316L試料の深さ約40nm程度まで形成されており,(2)の厚さは約10000秒の放電で40nmに成長することが明らかになった.一方,Mixed-material堆積層の組成を導出するために,タンデム加速器によるイオンビーム分析も実施した.その結果,Mixed-material堆積層の組成は98%程度が炭素,2%程度が鉄で構成されていることが明らかになった. 以上の結果より,LHDのヘリウム長時間放電では,炭素が主のMixed-material堆積層とヘリウム照射によるSUS316L基盤への照射損傷により表面近傍のミクロ構造が刻一刻と変化を遂げていることが実験的に確かめられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の平成26年度の研究実施計画では,(1)照射用試料の準備と材料照射実験(代表者が担当),(2)長時間放電用の加熱入力と粒子供給の最適化(分担者2名が担当),(3)粒子バランスデータの解析(分担者1名が担当)を行う予定であった.これに対して,(1)に関しては既に,材料照射後のSUS316L試料において,集束イオンビーム加工観察装置(FIB)による透過型電子顕微鏡(TEM)用ナノ断片薄膜試料の作成,およびTEMによる微細構造解析を実施することができている.また,(2)に関してはある条件では達成することができており,(3)についても順調に進めることができている.以上の観点から,当初の計画以上に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
平成23-25年度の若手研究(B)(研究代表者:時谷政行)で実施した「先進的なの加工技術を用いたMixed-material堆積層の構造特性評価」の分析技術を用いて,長時間放電曝露後の試料においてより詳細な微細構造解析を進める.具体的には集束イオンビーム加工観察装置(FIB)で放電時間(曝露時間)の異なる複数の試料からナノ断片薄膜試料を作成し,透過型電子顕微鏡(TEM)による微細構造解析を実施する.また,通常のTEM観察だけでは微細構造中の元素の組成分布を導出することができないため,走査型透過電子顕微鏡(STEM)機能を併用した微細構造解析も実施する.これには,核融合科学研究所の高分解能STEMを使用する.さらに,ヘリウムによる損傷や,Mixed-material堆積層の形成が生じた表面変質層に対して,どの程度の量のヘリウム粒子が捕捉されるのかを定量的に把握するために,昇温脱離ガス分析(TDS)実験を行う. 得られた結果より,対向材料表面(特に第一壁材料:SUS316L)がどのような表面変質を受け,そこへの粒子捕捉特性変化はどの程度であるのかを定量的に導出する.
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次年度使用額が生じた理由 |
特に旅費の使用額が当初の予定よりも少なかったことが,次年度使用額が生じた要因となっている.理由としては,出席する学会の変更と分析実験および打合せの実施回数の変更が主なものである.
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度と比較して,平成27年度は分析実験および打合せのための国内移動回数の増加が想定される.そのため,次年度使用額は主に国内移動旅費として使用する計画である.
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