研究課題/領域番号 |
26420861
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
井戸村 泰宏 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究主幹 (00354580)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 核融合 / トカマク / ジャイロ運動論 / 数値実験 / 同位体効果 / イオン温度勾配駆動乱流 / 捕捉電子モード乱流 |
研究実績の概要 |
国際熱核融合実験炉ITERにおける核燃焼プラズマの閉じ込め性能を評価する上で、異常輸送(プラズマ乱流によって発生する熱輸送)の機構解明が重要な課題となっている。本研究では、近年の実験的研究で定量的に明らかになった水素プラズマと重水素プラズマにおけるエネルギー閉じ込め性能の大きな違いに着目し、異常輸送の同位体効果を第一原理モデル(ジャイロ運動論)に基づくペタスケール乱流シミュレーションによって解明する。さらに、同位体効果の物理機構の理解に基づき、重水素、三重水素、ヘリウムを含む核燃焼プラズマのエネルギー閉じ込め特性を評価する。 今年度は捕捉電子モード(TEM)乱流を含む数値実験に向けて運動論的電子モデルの開発を実施した。静電的モデルによって捕捉電子が駆動する低周波のTEM乱流を解析する上で、通過電子が励起する高周波ノイズによる時間ステップの制約が問題となっていた。この問題を解決するために、方程式系の非軸対称な乱流場の計算部分において通過電子の応答を解析的に近似し、それ以外の部分では通過電子も含めた完全電子モデルを計算する新たなハイブリッド電子モデルを考案した。これにより、高周波ノイズを消去して計算コストを大幅に削減しつつ、TEM乱流、衝突性輸送、両極性条件等の重要な物理効果を記述できることを確認した。また、予備的な数値実験の結果、運動論的電子の共鳴現象によって波状密度分布と微視的な径電場が形成し、この電場によるシア流が乱流を抑制するという新たな飽和機構を発見した。次年度は運動論的電子を含む水素プラズマと重水素プラズマの数値実験を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の予備的なイオン温度勾配駆動乱流数値実験の結果から同位体効果の装置サイズ依存性と質量依存性を検討した結果、後者を解析するには運動論的電子を含む新たな数値実験が必要となることがわかった。これを受けて今年度は新たに運動論的電子モデルの開発を行った。運動論的電子モデルの開発は当初の研究計画では予定していなかったが、今年度中にモデル開発と検証を完了して成果を論文に公表し、最終年度に運動論的電子を含む数値実験を実施する準備が完了した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に開発した運動論的電子モデルを用いて次年度に同位体効果解析のための数値実験を実施する。新しいハイブリッド電子モデルでは、高周波ノイズの消去によって計算コストを従来の完全電子モデルの1/10以下に削減できたが、断熱電子モデルに比べると計算コストが約10倍となっている。このために計算資源が大幅に不足しており、解析規模については当初の計画で予定していたJT-60U、および、ITER規模の解析を断念し、JT-60Uの1/2規模の装置サイズで数値実験を実施することにした。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に予定されている国際会議のプログラム委員会から招待講演の依頼があったため、今年度の一部の旅費の使用をとりやめた。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度の成果を取りまとめて上記国際会議の招待講演で成果発表を実施する。
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