研究課題/領域番号 |
26420865
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
福元 謙一 福井大学, 附属国際原子力工学研究所, 教授 (30261506)
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研究分担者 |
鈴土 知明 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究員 (60414538)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 転位 / 照射欠陥 / 分子動力学法 / 照射硬化 |
研究実績の概要 |
TEM内引張その場観察によるHeイオン照射した各種BCC金属(V,Mo,α-Fe)においてボイドに対する転位障害強度因子の大きさはボイド径サイズに対して依存せず一定である事が明らかになった。この結果は同一の結晶構造を持つ金属あるいは合金であれば、ボイドのサイズに依存せず同一の障害強度因子を示す事になり、ボイド形成による照射硬化量を予測する障害強度因子パラメータを合金種によらず決定できる事を意味する。 本年度は実験研究の継続と共に、本研究で得られた実験データに基づき、ボイド-転位相互作用による照射硬化機構を明らかにするため、分子動力学的手法(MD)を用いてBCC結晶格子内に導入された空孔型欠陥集合体と転位要素片の動的相互作用の計算機模擬実験を開始した。結晶ポテンシャルには報告されている既存のα-FeのMenderevポテンシャルを用い、MD法計算コードはLAMMPS-MDシミュレーターを用いた。Fe中にサイズの異なるボイド型欠陥を導入し、らせん転位あるいは刃状転位を結晶中に運動させてボイド-転位相互作用過程と変形機構について検証した。らせん転位運動において(112)すべりを生じ不安定であったため、(110)面すべりでの運動になるよう、検討結果から50ステップごとに応力緩和させるパルス緩和手法を用いた。刃状転位においては転位とボイドの強い引力相互作用が見られ、OKにおけるボイドの障害抵抗因子は0.6程度と実験結果を再現する値が得られた。一方らせん転位においては転位とボイドの相互作用は見られず反応無く通過する様相が得られた。この計算結果は実験事実と異なる結果で有り、次年度ではらせん転位における転位運動について計算結果の妥当性について検証し、転位ーボイド相互作用についてさらに検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度から着手したMD計算機実験により成果が得られ、予想より伸展した成果が得られつつあるが、予想された研究成果と異なる結果が得られ、現在計算結果の詳細について検討中である。このため実験系の研究計画の伸展はあるものの、計算機研究の着手が早期だったにもかかわらず、計算研究内容の充実はまだ不十分として、概ね順調に伸展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
TEM内引張その場観察によるHeイオン照射した各種BCC金属(V,Mo,α-Fe)においてボイドに対する転位障害強度因子の研究データのさらなる蓄積による転位ーボイド相互作用の定量的評価の精度を上げてゆく。研究手法自体は確立したため実験の継続を進める。 計算機実験では研究結果が妥当であるかを見極めつつ、より多くの計算機実験結果を精査し、原子レベルでの転位ーボイド相互作用の挙動について明らかにし、相互作用の機構論的解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品購入の計画時と実施時の差額が発生したことと、研究分担者が平成28年度に研究成果発表を海外の国際会議で行う予定だが、28年度の使用計画で不足が見込まれるため27年度予算の一部を次年度予算に組み込んで使用したいと申し入れがあったため、平成27年度予算の当初使用計画から変更したものである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に研究分担者により海外での計算機実験に関する国際会議で当研究成果を含む発表を行うため、当初予定していた平成28年度予算では不足が生じることが予想された。このため平成27年度の未使用額を繰り越して平成28年度予算に組み込み海外発表用渡航費用および会議参加費として使用する予定である。
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