研究課題
極微量核種の分光・分析に向けて、狭帯域・高繰り返し率注入同期チタンサファイアパルスレーザーを用いた高分解能共鳴イオン化分光法(Resonance Ionization Spectroscopy: RIS)の開発を進めている。3ヵ年計画の2年目である本年度の研究実績は以下のとおりである。(1)高分解能RIS開発のためのレーザー光源の整備として、グレーティング型チタンサファイアレーザーを構築し、発振波長・時間・出力の基礎特性を評価した。発振時間は発振波長領域で最大50 ns、出力変化により最大600 ns変化するが、共振器内のポッケルセルにより最大2000 nsの発振時間の遅延が可能であることを示した。これにより、遅延時間と発振波長域・出力の関係を明らかにした。また、安定性を向上させた注入同期型チタンサファイアレーザーの構築を行った。(2)グレーティング型チタンサファイアレーザーの基本波の広域にわたる波長可変性能と、共振器内での第二高調波発生による出力光の波長領域をもとに、Nbなどの高分解能RISに向けたイオン化スキームの候補を選定した。(3)本研究にて構築した改良型の注入同期型チタンサファイアレーザーとグレーティング型チタンサファイアレーザーにより、Zrの高分解能共鳴イオン化を行い、超微細分裂、同位体シフトを分解可能であることを示した。また、アクチノイド核種およびプルトニウムなどの高分解能RISに向け、フィンランド・ユバスキュラ大学にてガスセル中プルトニウム同位体のレーザー共鳴イオン化に関する基礎実験を行った。
2: おおむね順調に進展している
若干の遅れている部分と前倒しで実施している部分があり、概ね順調であると判断した。
国内にてプルトニウムなどの放射性核種の共鳴イオン化を行うための許可を得ることは、法令上、容易ではない。このため、引き続き研究協力者のドイツ・マインツ大学Klaus Wendt教授やフィンランド・ユバスキュラ大学Iain Moore教授の協力を仰ぎつつ、放射性核種分析を実施する計画である。このような基礎実験により、高分解能RISの基本性能を明らかにする予定である。
一部の光学系について、納入に時間がかかることが判明したため、繰越した。
平成27年度に購入予定であった光学部品を購入し、その他は当初計画通りに執行する予定である。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 5件)
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