平成28年度は、継続してネプツニウム原液を用いて試料調製を行い、吸光分光分析及びラマン分光分析を行った。平成26~27年度に得られたウラニル及びネプツニル錯体の分析結果と比較し、錯生成の詳細を理解した。 ネプツニウムを用いた試験について、実験系は濃厚塩化物系に対する比較対象として1M塩酸系を選定した。ネプツニウム(Np-237)を含有する硝酸溶液を出発原料とした。溶液をテフロンバイアルに分取して赤外線ランプを用いて乾固した。そこに濃塩酸を添加して乾固する作業を2回繰り返し、化学形を塩化ネプツニルに調整した。溶媒として、1M塩酸を用い、試料溶液を調製した。 調製した試料を蓋付き石英セルに封入し吸光分光分析を行った。吸光ピークを詳細に評価し、ネプツニウムの原子価を評価した。本調整法では、1M塩酸であっても、溶液内にはNp(V)のネプツニルとNp(VI)のネプツニルが共存することが確認できた。同試料についてラマン分光分析を行い、ネプツニルイオンのラマンシフトを測定した。Np(V)とNp(VI)のO=Np=O分子の対称伸縮振動に関するラマンシフトが観測された。これまでに得られたラマンスペクトルと比較することで、濃厚なLi及びCa塩化物系において、Np(V)のO=Np=O分子の非対称伸縮振動が発現することが明らかになった。このことは、O=Np=O分子の酸素がLi及びCaのカチオンと干渉していることを意味する。平成26~28年度にわたって得られた吸光分光分析、ラマン分光分析、及び分子軌道計算のネプツニル及びウラニルの結果から、濃厚塩化物系においてNp(V)に特有な陽イオン-陽イオン相互反応が発現していることが明らかになった。
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