研究課題/領域番号 |
26420871
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
牟田 浩明 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60362670)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 燃料被覆管 / ジルコニウム水素化物 / EBSD観察 |
研究実績の概要 |
軽水炉中、ジルコニウム水素化物は冷却水との腐食によって被覆管中に析出する。この水素化物は非常に脆く、高燃焼度燃料における被覆管の劣化要因のひとつと考えられている。しかしながら水素化物の機械物性の報告値は非常にばらつきが大きく、はっきりしない。本研究では水素化物の機械的性質の組織依存性、および結晶方位依存性を明らかにすることを目的とする。 平成26年度に作製した種々の水素化物について、J-PARCにて中性子回折パターン測定を行った。ここでαZrから直接δ水素化物を作製した試料では、βZrから作製した試料と比較して一部のピークがブロードであり、積層欠陥が存在していることが示唆された。あわせて行ったEBSD観察において、この二つの試料では組織が全く異なっており、αZrから作製した試料では(111)面に関して層状に結晶方位の乱れが生じていた。このような組織の差は中性子回折測定の結果と一致している。αZrからδ水素化物が形成する際、β相からの形成よりも大きな体積膨張を伴ったためと思われる。また別途作製したε水素化物相は全体に双晶構造を有しており、δ相よりも非常に低いヤング率を示した。押し込み試験により得られたδ相水素化物のヤング率は、αZrから作製した試料がわずかに低い傾向を示し、またいずれも粒によって大きなばらつきが見られた。この解明のため、次年度は大粒径の試料を用いて得られた結晶方位依存性について評価をまとめる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的通り中性子回折測定、EBSD観察から水素化物の作製方法によって大きく組織が異なることを明らかにしている。またε相で見られた特徴的な層状構造など、新たな知見が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
既に進めている機械的特性の結晶方位依存性については、電子状態計算の結果を参照してその妥当性を評価していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力者である松永氏が異動となり、計上していた20万円の旅費等を使用しなかったほか、予定していた押し込み試験装置の調整(調整費20万円)を他業務における費用で行ったため、およそ40万円の残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
主に研究成果発表のための学会出張旅費、論文校正費等にあて、成果の公開に努める。
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