研究課題/領域番号 |
26420877
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
小野田 忍 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究副主幹 (30414569)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イオン飛跡検出器 / ダイヤモンド / NVセンター |
研究実績の概要 |
本研究は、ダイヤモンドを超高空間分解能を有する蛍光飛跡検出器(FNTD)として利用可能であるかどうかを模索するものである。具体的には、数十nmの空間分解能で蛍光観察が可能な基底状態空乏化(GSD)法等を活用し、単一イオンが形成する空孔欠陥分布を明らかにすることを目的としている。本年度は、高温高圧(HPHT)法および化学気相成長(CVD)法の両方で作製したダイヤモンド結晶に対して、490MeV-Os、560MeV-Xe、400MeV-Feといった高エネルギー重イオンを照射し、熱処理によって欠陥と窒素不純物を結合させることで窒素-空孔(NV)センターを形成し、共焦点蛍光顕微鏡(CFM)でそれを観察した。その結果、イオン飛跡に沿ってNVセンターが形成されている様子が観察でき、結晶成長法の如何にかかわらずダイヤモンドがFNTDとして利用可能であることを明らかにできた。ただし、窒素不純物濃度が低いダイヤモンドではイオン飛跡を可視化することができなかった。このことは、窒素不純物濃度の最適化が不可欠であることを意味している。CVDダイヤモンドの窒素不純物濃度と形成されたイオン飛跡に含まれるNVセンター濃度の関係から、最も効率良く飛跡を可視化することの出来る窒素不純物濃度を推定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H26年度には3項目に分けて研究を進める計画であった。1つ目の基底状態空乏化(GSD)法のセットアップに関しては途中段階であるため、H27年度にも継続する。2つ目の窒素濃度コントロールが可能な化学気相成長(CVD)法により作製したダイヤモンドが蛍光飛跡検出器(FNTD)として利用可能であるかを検証する実験では、窒素濃度が高い3つのCVDダイヤモンドでイオン飛跡を可視化することに成功し、計画通りに研究を進めることができた。3つ目の熱処理温度依存性に関しては、1000℃しか試験しておらず、その他の温度での実験をH27年度以降に実施する。
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今後の研究の推進方策 |
超高分解能観察を可能とする基底状態空乏化(GSD)のセットアップを進める一方、協力研究先が保有する超高分解能観察装置を利用して、目的とするイオン飛跡の超高分解能観察を実現する。イオン飛跡の可視化には窒素不純物濃度の最適化が最優先であることがH26年度までの実験で明らかになったため、窒素濃度依存性を明らかにすることを熱処理温度の最適化よりも優先して実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年度に購入したレーザーについて、入札を実施したところ、予定額を大きく下回ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額に関しては、超高分解能観察実験のための光学機器消耗品を購入することに充てたい。
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