研究課題
本研究は、ダイヤモンドを超高空間分解能を有する蛍光飛跡検出器(FNTD)として利用可能であるかどうかを模索するものである。昨年度は、ダイヤモンドに高エネルギー重イオンを照射し、熱処理後に共焦点蛍光顕微鏡(CFM)観察することで、イオン飛跡を可視化できることを明らかにした。本年度は、熱処理条件の最適化に取り組んだ。800℃、1000℃、1200℃において、数分から10時間程度までの熱処理を行った。実験の結果、温度が高くなるに従いイオン飛跡の輝度が高くなることが分かった。輝度の高低はイオン飛跡を構成する窒素・空孔(NV)センターの数が増減したことに由来する。800℃及び1000℃の場合、処理時間が長くなるに従って、輝度が高くなった。一方、1200℃の場合、短時間(10分)で最も輝度が高くなり、長時間(2時間)の熱処理後に輝度が低くなることが分かった。次年度は1200℃に焦点を当て、熱処理の最適化条件の模索を継続する。加えて、1200℃の長時間熱処理によって飛跡を構成するNVセンターが減少することが分かったことから、高温かつ長時間の熱処理で飛跡を消滅させることができる可能性が示唆された。NVセンターを消失させることができれば、ダイヤモンドをFNTDとして再利用することが可能となり利用価値が高まることから、1200℃及びそれ以上の熱処理についても新たに取り組むこととした。
2: おおむね順調に進展している
H27年度までに、イオン飛跡検出実証、窒素濃度依存性、熱処理条件最適化を計画通りに進めてきており、順調に進展しているといえる。超高空間分解能の観測装置のセットアップについては計画通りに進んでいないものの、協力研究先が保有する装置を利用した観察を進めているところであり、研究の進展にはブレーキとなっていない。全体を通して、おおむね順調に進展していると考えている。
高温熱処理の有効性が明らかになってきたため、今後は熱処理条件の最適化を推進していく。
H27年度に購入を予定していたXYステージ購入と国際学会参加を見送ったために生じた。
高空間分解能観察を実現するための装置開発費用に充てたい。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Physica Status Solidi A
巻: 212 ページ: 2641-2644
10.1002/pssa.201532219